失着点・展界編 22


(22)
「…ええ、はい、そうです。…彼は今夜はこちらで…。連絡が遅くなりまして
申し訳ありません。」
ブ−ン…という微かなモーターの音と、誰かとやり取りしている緒方の低くて
穏やかな声が聞こえていた。
ヒカルは上半身を起こし、周囲を見回して長椅子の背もたれの向こうに立つ
緒方を見つけた。電話を切り、緒方もヒカルに気が付いた。
「…あの…もしかして、ここ、緒方さんの…?」
「もしかしなくてもオレの部屋だ。」
「す、すみませんっ、オ、オレ、帰ります。」
ヒカルは赤くなって椅子から立ち上がった。
「うん?『眠い』『泊めて』とか言っていたぞ、お前。タクシーに乗るなり
完全に眠りこけやがって…。今お前の家に電話したところだが、帰りたいなら
もう少し待て。酒がまだ残っている。」
タクシーに乗るまでは、緒方について歩いて行ったらしい。覚えていないが。
それより緒方がヒカルのぶしつけな頼みごとをあっさり聞き入れてくれた
らしいという事が意外だった。何だか気が抜けた。
だが、だからといって事態は好転したわけではなかった。意識がはっきりする
につれて再度具合が悪くなってきた。
「緒方さん、…すみません…トイレ、貸してください…。」
「ああ、そこのドアだ。」
緒方はさして気にする様子もなくパソコンに向かっている。
トイレに入るまでは、別になんともないようにして、そしてドアを閉めるなり
便座に突っ伏してヒカルは吐いた。胃が競り上がって来るような苦しさと
同時に、激しく下腹も疼き出した。



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