社妄想(仮) 22
(22)
「進藤……」
「とぉ、や……おねがいが、あるんだ……」
今にも消え入りそうな声で、か細く震えながら。
そんな様子が余りにも哀れで、アキラはヒカルを優しく抱きしめながら問う。
「何?」
ヒカルは暫くアキラの肩に顔を埋めていたが、やがてゆっくりとアキラの胸に手を付いて距離を取ると、おもむろに下肢に手を伸ばした。
「ん……くっ……」
そしてアキラが何か言おうとするのも許さず、自らの内部に指を忍ばせると、何かを掻き出すようにして手に握り、アキラの眼前に突き出した。
「これ……とって、……欲しいんだ……」
息も切れ切れに訴えるヒカルが、いつもと様子が違う事など、すぐに分かった。
目の潤みも、桜色に染まった身体も、全身に走っている微弱な震えも。
アキラの中の余計な知識の中に、思い当たるものがあった。
「薬を飲まされたのか……」
何も言わずただヒカルは頷く。
アキラがヒカルを抱き寄せ、髪をそっと撫でると、ヒカルはアキラにぎゅうっとしがみついた。
「ごめん、ごめんな、塔矢……。オレ……」
「謝る事なんてない。傷付いたのは君だ」
涙の伝う頬をそっと撫でる。
正面からヒカルを見据えると、ヒカルは頬に触れるアキラの手に自らの手を重ね、頬擦りした。
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