ルームサービス 22 - 23
(22)
「それに肌丈夫みたい、ケガとかしてもあんまりあとに
なったことない」
「なるほどお」
「あ、ジャグジー、オレ先にジャグジーはいろっと」
子供のように走っていったヒカルを見送って緒方がつぶやいた。
「まあいろいろと大変なこったな」
「だからナニが言いたいんですか、緒方さん?」
「アキラ君の背中には思い切り爪のあとが残ってるんだよ」
(23)
浴室の床にだらりと投げ出されたヒカルの両腕と、両足に
はかなり強く拘束具の線が残ってしまっている。
「塔・・・矢」
顔に手をよせようとするが痺れて力が入らないようだ、次の手合いまで
に石が持てるようになるかどうか少し不安になったが、そんなことはとり
こし苦労にすぎないと苦笑した。
ヒカルの肌は跡を残さない。
何者も進藤ヒカルを侵すことはできない。
肩をひくつかせて笑う緒方をアキラは睨むしかなかった。
「昨日か、おとといか?」
アキラは憮然として答えない。緒方には二人の関係はバレていた。
「昨日ですよ」
緒方はが笑うのをやめ、ジャグジーの中ではしゃぐヒカルに目をやる。
「へえ、一晩で跡が消えたのか」
アキラは言われて初めて気が付いた、そうだ、アキラの背中にヒカルの
爪の跡が残ったように、アキラもヒカルの体に散々跡をつけた。
なのにそれが、さっき見た限りでは残ってなかった。
「それで、蚊がとまった瞬間にわかるぐらいに敏感とね・・」
「ナニがいいたいんですか、緒方さん」
「壮絶だな」
「ナニが」
「見てみろよ」
緒方が顎でジャグジーを示す。
ニコニコと笑いながら、いろんなつかり方を試しているヒカル。
アキラと目が会うと、楽しそうに手を振った。
|