うたかた 22 - 23
(22)
「んぅ…っ、‥ア…ぁあッ!」
しばらくするとヒカルは喘ぎ声を抑えようとしなくなった。時間をかけた愛撫ですっかり思考回路がマヒしてしまったのだろう。
何度も出し入れしていると、ようやくスムーズに指が動くようになってきた。
そろそろか、と思ってぬるりと指を抜くと、ヒカルの濡れた瞳が加賀を見上げた。涙の痕が幾筋もついた頬を見ていると、なんだか強姦しているような錯覚に陥る。
「入れるぞ。」
僅かに緊張と怯えの色を浮かべて頷いたヒカルの唇を軽く吸って、加賀は自分のものを入り口にあてがうと、ゆっくり腰を進めた。
「ひぁっ…!痛‥あ…っ」
指とは比べものにならない圧迫感と質量感に、ヒカルの息継ぎの速度は更に上がった。熟れた果実のような赤い唇や口内が、すっかり渇いてしまっている。
「進藤…」
ベッドの軋みと一緒に、ヒカルの高い声が響く。それを聞いただけで自分が更に昂ぶるのがわかった。
自分が、坂道を転がるように、どんどんヒカルにハマっていっているのは自覚していた。
でも壊れたブレーキを誰が直してくれるというのだろう。
だが、直らなくてもいいと思う自分が存在するのもまた事実だった。
熱くて狭いヒカルの内部を掻き回しながら、加賀はヒカルの手を握りしめた。
冷たい指先が、なんだか自分を責めているようだった。
(23)
まだ雨降ってるんだ。
────あ、違う…。シャワーの音だ、これ…。
ヒカルは夢うつつのまま、枕に顔をうずめていた。
加賀の枕は新素材のパウダービーズが入っていて、すごく気持ちいい。
(底なし沼みたいに、このまま身体全部がこの枕ン中に入っていかねーかなぁ…。)
再び眠りに落ちようとした瞬間、ケータイの着メロが聞こえてきた。
(あれ…オレのケータイだ…)
この着メロは囲碁関係の知人だ。ヒカルはよくケータイで話す友人は、すぐわかるように特定の着メロを設定するが、あとは大雑把に分けているだけだった。
(仕事の電話かな…)
棋院からの緊急連絡だったら無視するわけにはいかない。ベッドから出てケータイを取れ、と頭は信号を出し続けるのに、ついにヒカルの身体は腕を上げることすら出来なかった。
ヒカルは額を枕にすり寄せて、迫り来る睡魔に身を任せた。
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