Shangri-La第2章 22 - 24
(22)
背後でするかたかたいう音は、多分サイドテーブルの引き出しを使っている音だろう。
前と変わらないなら、二番目の引き出しの手前の方にローションが入っていて
引き出しを少しだけ引いて、手だけで探り当てて引き出すのが常だった。
「ひぁ、っ…」
そんな事を考えているうち、期待していると同時に不安でもある感触が
現実になって、思わずアキラはその冷たさに身を竦めた。
が、次の瞬間には身体を弛緩させようと努めて意識して、
何度か深く呼吸をした。
ぬるり、と指が一本差し入れられ、中を伺ってくる。
「んっ…、ん………あ…」
ゆっくりともたらされる中への愛撫が、嬉しくて、もどかしい。
喘ぎ声が嫌いな緒方に媚びるため、声になるのを抑えようと喉を開きながらも
意識は全て中で蠢く指使いに持っていかれてしまいそうだ。
不意にぐるりと指を回され、その感覚に身体がびくりと跳ねたが、
大きく吐息が漏れただけで、辛うじて声は出なくて
緒方の機嫌を損ねずに済んだ事に安堵した。
間もなく指を足され、アキラの中を探りながら、解し広げ始めた。
(もう少しだ。本当に、あと少しだ……)
アキラはもう一度後ろを緩めようと、ほうっと息を吐いた。
(23)
入口に先端があてがわれ、今にも…、というところで緒方が口を開いた。
「聞いておくが、本当に、いいんだな?」
アキラは大きく頷いた。
「本当に、後悔しないな?」
「しない…から、はやく……」
繰り返される質問を封じようと、アキラが懸命に言葉を搾り出して
緒方を急かすと、緒方は黙って一気に奥まで突き入れた。
「あああぁ――――――っ!」
思わず溢れた大きな声にアキラは自ら驚いて、慌てて口元を押さえた。
自分の中に確かに存在する、奥深くまで埋められた緒方の感触に
全身を苛む熱が、際限なくポンプアップされているが
緒方は動こうとせず、アキラの尻を掴んだままだ。
嫌われたか、と不安が生まれ始めたころになって、
ようやく緒方はゆっくり腰を引き始めた。
「…んんっ……」
中全体を目一杯使って擦られる感触が、
しかもゆっくりと引き出されるのが堪えられないくらい好くて
挿れたばかりなのにもう弾けてしまいそうで
アキラは飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止めていた。
(24)
(まさか、またアキラを抱くことになるとは――)
挿入前の念押しは、アキラへの意思確認というよりは
緒方自身への再確認の意味が強かった。
確かに、手を離れた後のアキラに興味を持ったし、
また一時はその妖艶さに危険を感じ、踏みとどまったのも事実だ。
他人のものに手は出さない主義だという言葉もまた真実だが、
これだけ懸命に、縋るように求められて、
それでもアキラを突き放すことは、やはり緒方にはできなかった。
若いヒカルと比べられたくなかったし
久しぶりのアキラをじっくり味わいたいという理由で
最初から飛ばすのは止めておいたが、そのゆっくりした動作の中で
アキラの身体が少し強張っていることに気づいた。
「アキラ、どうかしたか…?」
動きを止めて声をかけた。よく見ると、シーツを握りしめた手が
力が入りすぎているのか、妙な白さだ。
「はぁっ………い、た……んん…」
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