日記 22 - 24
(22)
アキラが「すぐに来い」と言ってくれたので、ヒカルは急いで家を出た。
「帰ったばかりで、また、出かけるの?」
母が、不満半分、あきれ半分の口調で言った。ヒカルは母に「今夜は泊まる」と告げて、
出て行った。
今日は、アキラに会わない方がいいと思っていたのに、会いたくて会いたくてしょうがない。
いつ電車に乗ったのかも憶えていない。頭の中はアキラのことでいっぱいだった。
早足で道を急いでいると、前からアキラが走ってきた。
「進藤…!」
ヒカルを心配して、迎えに来てくれたようだ。何日会っていなかったっけ?
ほんの二、三日だったと思うけど、すごく会っていないような気がする…。
アキラの顔を見た瞬間、ヒカルは泣いてしまった。
アキラが泣いているヒカルの肩を抱くようにして、自分のアパートまで連れて帰った。
通りすがりの人たちが、好奇の視線を投げてよこしたが、それを気にする余裕はヒカルには、
なかった。
(23)
玄関に鍵をかけると、アキラはいきなりヒカルにキスをした。ヒカルは、僅かに身じろいだが、
抵抗はしなかった。泣いているヒカルを慰めたい気持ちもあったが、もう何日も触れていないヒカルの
肌に触れたかった。ヒカルがこんなに悲しんでいるのに、そのヒカルに劣情を抱くなんて、
自分はとてもひどい奴だと思った。だが、アキラは自分を止めることが出来なかった。
唇から、顎を伝い、喉元に唇を這わせた。
「ああ…塔矢…」
アキラにしがみつくヒカルの手に力がこもる。アキラの身体に火がついた。このまま、
ここでヒカルを抱いてしまいたい。
「あ…待って…ダメだよ…」
ヒカルがアキラを押しとどめた。性急なアキラの要求に、ヒカルは戸惑っていた。
「オレ…今日、何の準備もしてきてない…」
「かまわない。」
アキラはヒカルを愛撫する手を休めなかった。
「それに、出かけてたから…汗かいてるし…」
「気にしない。」
それでも、ヒカルは、アキラに「でも」と「だって」を繰り返す。アキラは焦れて、
ヒカルの腕を掴んで浴室の方へ向かった。
「一緒に浴びよう。それなら、いいだろう?」
(24)
アキラは、脱衣所で着ているを脱ぎ散らかし、のろのろと手を動かすヒカルの服を手早く
脱がせた。そして、ヒカルを抱きかかえるようにして、浴室へ入った。
シャワーのコックを捻ると、冷たい水が降り注いできた。
「ひゃあ!冷たい!」
ヒカルがびっくりして悲鳴を上げた。
「ごめん。すぐ、熱くなるから。」
水から守るようにして、アキラはヒカルを抱きしめた。
「ううん…気持ちいい…」
ヒカルは顔を上向け、水をその顔に滴らせた。
アキラの言うとおり、冷たい水はすぐに熱い湯に変わった。ヒカルが、ちょっと
がっかりしたような顔をする。その顔がすごく可愛くて、アキラはヒカルの頬にに口づけた。
さっきまで、泣いていたのに、もうシャワーの水しぶきにはしゃいでいる、そんなヒカルを
アキラはとても愛しく思った。
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