平安幻想異聞録-異聞- 224


(224)
白馬は漆黒のたてがみと尾を持ち、首には、漆黒のおもがいと漆黒の
手綱がかけられていた。鞍はない。その裸の馬の白い背に身を預け、
佐為とアキラはその場に踊り込んで来た。
アキラが小さく自分にしか聞こえない程の声でつぶやきながら、一枚の
札を投げると、ヒカル達と大蛇の群れの間に青白い炎の壁が出来た。
「佐為殿! 早く!」
アキラの叫ぶ声に、佐為が腕を伸ばしてきた。
「ヒカル!」
しばし唖然としていたヒカルだが、その声に佐為の腕を取り、勢いをつけて
自分の体を馬上に持ち上げる。佐為の後ろに跨がって、懐しい背中にしがみつく。
だが、呑気に再会を喜んでいる暇はなかった。
「急いで下さい、佐為殿! この足止めはそう長くは持ちません!」
佐為は馬の首をめぐらす。
「ヒカル、しっかりつかまっていなさい」
力強く瓦礫の山を乗り越え、二人を乗せた白馬は庭に降り立った。アキラを
乗せた馬もそれに続く。
数瞬おいて、アキラの言った通りあの蛇達が後を追ってきた。
門の方へと馬を走らせれば、蛇達も地面をまるで氷の上を滑るがごとき
早さで這ってついてくる。
アキラを乗せた馬はともかく、二人分を背負うことになった馬の方は、
佐為がどんなにせかしてもなかなか速度が上がらず、足元に迫った
蛇に怯えて嘶いた。



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