日記 226 - 228


(226)
 「ア、イヤぁ………!」
少しずつ、中を押し広げていく感覚に、ヒカルは呻いた。アキラは、ヒカルのソコを存分に
慣らしてから行為に及んだ。それでも、痛くて苦しくて、ヒカルの身体は悲鳴を上げた。
「う―――――――」
懸命に声を抑えようとするヒカルの耳に、アキラの心配そうな声が届いた。
「ガマンしなくていいんだよ?」
ヒカルは、歯を食いしばって首を振った。
「意地っ張りだね……でも、そう言うところが、とても好きだよ…」
繊細な指先が頬に触れ、ヒカルの強張りを溶かしていく。
 時間を掛けてゆっくりと全てがヒカルの中に埋め込まれた。
「………進藤」
忙しない息遣いとともに名前を呼ばれて、ヒカルは静かに目を開けた。
「大丈夫?」
ヒカルは小さく頷いて、彼の首に腕をまわした。

 一旦、身体を繋げてしまうと、箍が外れてしまったのか、アキラの扱いは烈しく荒々しかった。
にも関わらず、ヒカルはその烈しさを求めていた。自分を穿つアキラをもっと深く感じようと、
自ら足を開き彼の腰を抱え込んだ。
 この時をあれほど恐れていたというのに…………恐怖も嫌悪も何も感じなかった。
むしろ、愛しさだけが、胸に溢れてヒカルを熱くした。
「あ―ァ、アァ―や、はぁン………!」
ヒカルの口から絶えることなく声が漏れる。押さえることなど出来なかった。
「ァ、イクよ……ヒカル………」
アキラが熱い吐息が耳に掛かった。

………………………………ヒカル?

 薄く目を開け、アキラの顔を見る。彼は強く目を閉じ、自分の行為に没頭している。
―――――――今、なんて?
そう問いかけようとしたとき、大きく腰を突き上げられた。
「ヒァ………!アァァ―――ッ」
ヒカルの意識はそこで途切れた。


(227)
――はい―いえ…こちらの方こそ………申し訳………

 遠くで、途切れ途切れに聞こえてくる話声に、眠っていたヒカルの意識は現実へと引き戻された。
「―塔矢?」
手を伸ばした先には、誰もいない。冷たいシーツの手触りが、ヒカルを不安にした。
 慌てて身体を起こそうとしたが、身体がだるくて動かない。仕方なく、身体を伏せたまま
部屋の中を見渡す。
 暗い部屋の中では自分の手さえ、よく見えなかったが、目が闇になれるにつれ、少しずつ
様子をうかがうことが出来た。
 本棚、窓、机に置かれたパソコン………ヒカルの部屋ではない。
「よかった………」
アキラの部屋だ。そして、自分が今横になっているのは、アキラのベッド。
 夢ではなかった―――――――
安心したのか、ヒカルは再び瞳を閉じて、またうつらうつらとし始めた。


(228)
 気を失ってしまったヒカルから、ゆっくりと身体を離した。名残惜しくはあったが、ヒカルを
このままにしておくわけにはいかない。
 アキラはシャツを羽織り、部屋を出て行った。そのまま浴室の方へ向かい、洗面器に湯を
汲んだ。
それから、タオルを数枚用意して、また部屋へと戻った。
 ヒカルの汗と涙に濡れた顔を優しく濡れタオルで拭いていく。首筋、胸、腕、汚れた下半身は
特に念入りに拭った。
 風邪を引かないように、パジャマを着せようとしたが、小枝のようにか細く痩せているとはいえ、
くったりと力の抜けてしまった身体は頼りなく、重かった。
 さんざん苦労して漸く着替えさせたとき、アキラもすっかり疲れ切っていた。エアコンの
温度を調節し、大切にヒカルをタオルケットに包んだ。そうして、ヒカルが目を覚まさないように
そっとドアを開けた。

 「ふう………」
シャワーを浴び、濡れた髪をタオルで拭きながら、冷蔵庫の扉を開けた。中には、ミネラルウォーターや
スポーツドリンク、ジュースの缶が並んでいる。そして、未成年であるアキラの元にあってはいけない
ビールが入っていた。スポーツドリンクやジュースはヒカルのために用意しておいたもの、
それ以外は自分のためのものだ。
 アキラは迷わずビールを取り出し、プルを押すとぐいっと一息に飲み干した。
「ふ――………」
息を吐いて、手の甲で口を拭う。
 以前ヒカルの前で、同じコトをやったとき、大きな目をまん丸に見開いてビックリしていた。
――――可愛かったな……進藤……
またあんな風に、戯れあったりケンカしたり、そんな時間が戻ってくるといい。



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