平安幻想異聞録-異聞- 227


(227)
ヒカルとアキラは結界を越えて、かつて二条通りにその偉容を誇った座間邸に
飛び込んだ。壮麗な寝殿造りが今は見る影もない。
辿り着いた西門はすでに崩れていたので、壊れて倒れた壁を乗り越えて侵入する。
途端に異様に濃い瘴気が二人を包んだ。
まるで水の底にいるようだ。
「これだけ妖気が濃くては、奴の本体がどこにあるかもわからない!」
アキラが忌々しげにつぶやく。
「賀茂、俺、体が本調子じゃないからな。長期戦はごめんだぜ」
「わかっている」
二手に分かれて、敵の本体を探すことになった。賀茂アキラは西対屋を、
ヒカルは東対屋を。
アキラが天を指した。
「見つけたら、あれに手を振るかして知らせてくれ」
そこには黒い鳥が一羽。円を描いて飛んでいた。
「僕の方でも君に知らせる。くれぐれも、一人でどうにかしようなんて考えるな」
「おまえもな!」
お互いに無理をしないことを約束させて、馬を出す。
庭を突っ切り、ヒカルは騎乗したまま東対屋の建物の中へと乗り上げた。
破壊され、倒れた柱や瓦礫、床板の割れ目などで障害物だらけになった渡殿を、
ヒカルは目をこらし、あちこちを覗き見ながら単騎駆け抜ける。あの肉蛇の
本体はどこか。また、逃げ遅れた怪我人はいないか。馬の蹄が、いつもなら
楚々とした侍女達が行き来する廊下を踏みしだいてゆく。
馬の耳が不意に怯えたように後ろに伏せられた。ヒカルはそれを見て腰の
調伏刀を抜き、振り向きざまに確かめもせず薙ぎ払う。
後ろの天井の隙間からヒカルの背中を狙い澄まして飛びかかった肉蛇が、
空中で見事に真っ二つにされ、頭と胴体が別れて、焦げ臭い匂いをさせながら
床に落ちた。
見覚えのある区画に差しかかった。ヒカルはずぐに、それが、座間から与えられ
ていた自分の部屋の辺りであることに気がついた。



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