少年王アキラ 23


(23)
「王よ!」
二つの声が同時に響いた。
一つの声は歓喜にふるえ、もう一つの声は悲哀と怒号を含んだものであったが。
「…お待ち下さい、王よ!まさかこのような者に貴重な薬を使えとでも…」
オガタンは必死に言い募ろうとした。しかし、それはアキラ王には逆効果であった。
「オガタン!!」
アキラ王の声が室内に響き渡る。
「我が決定を覆せと言うのか?」
少年王の決定は絶対なのだ。いかなオガタンと言えど逆らう事は出来ない。

正に千載一遇のチャンスであった所を…!どこまでも邪魔をする奴め!!
期待に打ち震える執事を、視線だけで殺せそうな勢いで、オガタンは睨み付けた。
だが、その殺気のこもった視線が更に執事の期待と興奮をいや増している事に気付くと、
空虚な目眩を感じて、不覚にも足元がふらつきそうになった。
今までにも何度もチャンスはあったのだ。
だが、そのたびにこうやって執事や食事係、その他少年王に仕える諸々の者どもに
邪魔され続けてきたのだ。
そして今日もまた…オガタンはその無情な運命を呪った。

なぜ、いつもこうやって最悪のタイミングで邪魔が入るのか?
愛する我が王よ、やはりオレとあなたとは結ばれない運命なのか…?

オガタンはゆるりと振り返って哀切な視線をアキラ王に投げかけた。
そんな視線など意にも介さず、アキラ王はにっこりと微笑んでオガタンに命じた。
「さあ、薬の使い方を、その効能をボクに見せておくれ、オガタンよ。」



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