Shangri-La 23
(23)
「ただいまー。」
アキラは殊更に笑顔を作り、ヒカルに声をかけた。
「進藤、雑炊買ってきたんだけど、食べない?」
「いいよ、要らない」
「そんなこと言わずにさ、もう何日も食べてないんだろ?
無理しなくて良いから、少し食べてよ」
食べてよ、っていう事自体が無理強いなのにと思いながら、
ヒカルはアキラの勢いに負け、しぶしぶと従った。
アキラは、コンビニで買ってきた雑炊を温めると
ヒカルのために茶腕を出し、本当に少しだけ取り分けた。
「これだけでも、嫌?」
食べないとまた説教されそうで、ヒカルは茶碗を受け取った。
アキラは黙ってヒカルを見つめている。
「なんだよ、じろじろ見るなよ。食いづれーな。ちゃんと食うよ。
大体お前は?さっき腹減ったって言ってなかった?」
「うん、後で食べるよ。あんまり目の前に食べ物が並んだら
キミが嫌だろう?さっきみたいになっても困るし」
「別にいーよ。人の領分の食べ物はいくらあっても平気だから。
でも絶対オレに食えって言うなよ」
「そう?分かったよ。じゃぁボクも食べようかな」
アキラが自分の分を温め始めた隙に、ヒカルは自分の茶碗に箸をつけた。
その量は僅かで、二口三口で平らげてしまった。
それに気づいたアキラが、お替わりは?と聞く。
ヒカルは、じゃぁ、もう少しだけ、と茶碗を差し出した。
またほんの少しだけ盛られ、平らげ…をちまちまと繰り返すうちに、
食べルなんて気持ち悪い、と言ったその口で、器をほとんど空にした。
「進藤、大丈夫?具合悪くない?」
「ん、へーき…」
「結構食べられたね。よかった。」
第一関門クリアかな、と呟くと、アキラは立ち上がって後始末を始めた。
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