ルームサービス 23
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浴室の床にだらりと投げ出されたヒカルの両腕と、両足に
はかなり強く拘束具の線が残ってしまっている。
「塔・・・矢」
顔に手をよせようとするが痺れて力が入らないようだ、次の手合いまで
に石が持てるようになるかどうか少し不安になったが、そんなことはとり
こし苦労にすぎないと苦笑した。
ヒカルの肌は跡を残さない。
何者も進藤ヒカルを侵すことはできない。
肩をひくつかせて笑う緒方をアキラは睨むしかなかった。
「昨日か、おとといか?」
アキラは憮然として答えない。緒方には二人の関係はバレていた。
「昨日ですよ」
緒方はが笑うのをやめ、ジャグジーの中ではしゃぐヒカルに目をやる。
「へえ、一晩で跡が消えたのか」
アキラは言われて初めて気が付いた、そうだ、アキラの背中にヒカルの
爪の跡が残ったように、アキラもヒカルの体に散々跡をつけた。
なのにそれが、さっき見た限りでは残ってなかった。
「それで、蚊がとまった瞬間にわかるぐらいに敏感とね・・」
「ナニがいいたいんですか、緒方さん」
「壮絶だな」
「ナニが」
「見てみろよ」
緒方が顎でジャグジーを示す。
ニコニコと笑いながら、いろんなつかり方を試しているヒカル。
アキラと目が会うと、楽しそうに手を振った。
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