失着点・展界編 23


(23)
緒方はパソコンに向かってはいたが、頭の中にはタクシーに乗る前の、
ヒカルの表情の事が引っ掛かっていた。
…確かにあいつは、泣いていた。だがその事に触れていいものかどうか。
一時期真剣に囲碁をやめようとしていた時期もあったと聞いている。
「…まあ、あいつはあいつなりにいろいろあるんだろうな…。
…進藤の奴、まさか酒でも飲んだんじゃないだろうな。フッ。」
そのヒカルは、トイレの中で激しい苦痛に喘いでいた。
便器の中が真っ赤に染まる程の激しい下痢。腸の中で出血が続いているのだ。
一度峠を越したと思って流しても、直に次の痙攣が来る。出口の周辺が腫れて
いて、その瞬間の度に引き連れるような痛みが走る。
「ううっ…クッ…」
泣きながら天井を仰ぎ、ひたすら嵐が過ぎ去るのを耐えて待つ。
ハアハアと肩で息をし、ようやくおさまりが来て水を流して立とうとした時、
ポトリと何かが足元に落ちた。伊角が入れてくれたハンカチだった。
それが鮮血に染まっていた。それを見た時、スーッとヒカルの中で何かが
下がり、ゴトリとその場に倒れた。
物音がしたような気がして緒方はトイレの方を見た。
そう言えばかなり時間がかかっている。
「…進藤?」
念のため呼び掛けてみるが、返事がない。ノックをするが同じだった。
ノブを廻すとカギはかかっていない。緒方は躊躇することなくドアを開けた。



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