うたかた 23
(23)
まだ雨降ってるんだ。
────あ、違う…。シャワーの音だ、これ…。
ヒカルは夢うつつのまま、枕に顔をうずめていた。
加賀の枕は新素材のパウダービーズが入っていて、すごく気持ちいい。
(底なし沼みたいに、このまま身体全部がこの枕ン中に入っていかねーかなぁ…。)
再び眠りに落ちようとした瞬間、ケータイの着メロが聞こえてきた。
(あれ…オレのケータイだ…)
この着メロは囲碁関係の知人だ。ヒカルはよくケータイで話す友人は、すぐわかるように特定の着メロを設定するが、あとは大雑把に分けているだけだった。
(仕事の電話かな…)
棋院からの緊急連絡だったら無視するわけにはいかない。ベッドから出てケータイを取れ、と頭は信号を出し続けるのに、ついにヒカルの身体は腕を上げることすら出来なかった。
ヒカルは額を枕にすり寄せて、迫り来る睡魔に身を任せた。
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