闇の傀儡師 23 - 24


(23)
アキラは頷くと、ヒカルの手首を持って口元に引き寄せ、赤く晴れ上がった縄の痕に口づける。
「あっ…」
ドキリとしてヒカルが手を引っ込めようとしたが、アキラは強くヒカルの手首を握り離さなかった。
「可哀想に…こんなに腫れて…」
傷を癒そうとするようにアキラはその箇所に舌を這わせる。アキラの温かく微かな吐息に包まれて、
ヒカルは手首が熱くなっていくのを感じた。アキラの柔らかい舌の感触が心地良かった。
アキラはゆっくり何度も繰り返しヒカルの傷跡に舌を這わした。
やがてそれまでそこに貼り付いていた傷とちりちりとした痛みがスーッと消えて行った。
「あっ!?」
それを見てヒカルが驚き、アキラ自身も何かを確信したような表情になった。
「…こういう話はボクもあまり信じられないけど、おそらく人の魂を何らかの方法で吸い寄せて
操ったり人形に移したり出来る相手らしい。そいつに囚われてはだめなんだ、進藤。
絶対操られないという強い意志を持つんだ。」
「う、うん。…でも…」
アキラにそう言われてもヒカルにはあまりにも非現実的すぎて理解出来ないでいた。
それでもアキラは今度はもう片方の手首の傷を同じように舐める。
そこが済むと今度はヒカルの顎を少し持ち上げて首筋に顔を寄せて来た。
「と、塔矢…」
ヒカルが恥ずかしそうに顔を赤らめて首を竦める。
「ダメだよ、動かないで。」
アキラはヒカルの頬を両手で包んで、ヒカルをじっと見つめた。


(24)
「ボクがついている…。だから、悪い夢に負けちゃだめだ、進藤。」
白く細く柔らかなヒカルの首にはまだ痛々しい程に赤く焼き付いたような縄の後が
くっきりと浮き上がっていた。
手首の時の同様にアキラはそこに顔を寄せて舌を動かした。
「う…ん…」
今まで味わった事のない不思議な感覚にヒカルは頭の中がぼおっとした。
傷を消そうとしてくれているだけだと思っていても、何故か胸がドキドキした。
アキラはヒカルのジャージの胸元のファスナーを下げ、開いた。そこに現れた首から胸に走る
赤い縄の模様に眉を一瞬潜め、その痕を辿ってアキラの舌は動き続けた。
ヒカルはただ目を閉じてじっとベッドに横になっていた。
その時横になった状態にも関わらずぐらりと目眩がした。
ーまただ、と思ったがその時はもう既に声が出なかった。アキラはヒカルの異変に気がつかないまま
行為を続けている。暗闇に吸い込まれるようにヒカルは瞬時に眠りの淵に落ちて行った。
再び意識が戻るとやはり両手首を縛られ、四つん這いの体位にさせられていた。
「…どうやら邪魔者が来ているようだな。でも、時間の問題だ。君の身も心もじきに
私のものだよ、ヒカル君…。」
「お、お前なんかの好きにさせねえからな!」
ヒカルは男の声のする上の方へ顔をあげようとした。そのヒカルの目に映ったのは男の顔ではなく、
暗闇に浮かんだ明かり―火のついた赤いロウソクだった。
ヒカルがぎょっとしている間にその火の根元から赤い雫が落ちて来て、ヒカルの背に落ちた。



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