失着点・境界編 23 - 24
(23)
アキラの素肌はしっとりとヒカルの両手の平に吸い付くように密着し
ヒカルの手の動きに従って谷間の奥底を露にした。
ヒカルの視点は一ケ所に引き付けられしばらく動かせなくなった。
ほんのりと淡く色付いた、小さな火口。
良く見ないと分からない程の浅くて薄い皺の集中したその部分は、
予想していたものよりはるかに幼くて未発達な感じがした。
アキラと関係した後、ヒカルはあまりの痛さに恐る恐る自分のそこを手鏡で
見てみた事がある。
赤く腫れ上がったアヌスは、少し膨らんでかなりグロテスクに見えた。
ずっとこのままだったらどうしようかと思ったが、一週間位で腫れが退いて
ホッとした。
その事を思えば、少なくともこの数日は誰かがアキラのここに何かを施した
可能性は受け取れなかった。それ以前に、青く固く閉ざした果実はまだ
誰のものにもなっていないような雰囲気を漂わせている。
ヒカルは高まる心音のまま、手の位置を中央にずらし、さらに小さな火口を
押し開こうとした。
「…や…っ!」
さすがにアキラが反射的にヒカルの手から逃れて体をくの字に曲げ、肩ごしに
猛烈な抗議の視線を投げ付けてきた。そんなアキラをヒカルも睨み返す。
「まだ終わってないよ。…さあ、」
肩で息をしながら、うっすら涙さえ浮かべて無言でアキラはヒカルに怒りの
視線を浴びせ続ける。それを無視してヒカルはアキラの足首を掴むと引き寄せ
もう一度さっきと同じ姿勢を強制する。肉体的なアキラの抵抗はない。
だが気持ちの上でのピリピリとした拒絶感は痛い程伝わって来る。
手の平を火口近くに置いて指先で狭門を開く。
一瞬白っぽくなり、次第に赤みがかっていく内壁の様子が見えた。
(24)
幼い青臭さをたたえた狭門は強固な意志でヒカルの力に逆らい閉じようとした。
ヒカルはそのわずかな隙間に、右手の人さし指の先を宛てがう。
「ちょっと我慢してくれよ…。」
ヒカルは乾いたままの指先をアキラの中へ突き入れていった。
「…ッ!!」
アキラは身をよじってヒカルの指から逃げようとした。
「…動くなよ。できれば傷はつけたくないんだ。」
すでに指先の第一関節までを狭門に銜え込ませていた。
「…痛いよ…!」
「わかってるよ。早く済ませるから動くなって言っているんだよ。
…脚、もう少し開けよ。」
ヒカルは少しずつひねりながら指先を奥へ奥へと進める。
ヒカルはアキラの腸を内診するように指先に神経を集中させた。
痛いくらいに締め付けて来る肉壁はかつて此所に訪問者があったような
そぶりは全く見せなかった。誰かの残留物も、ローションの類いを塗られた
様子もなかった。ヒカルはゆっくり指を引き抜いた。
「…済んだよ。疑って悪かった。」
アキラは体を引き起こすと、バンッと激しく音を立てて手の甲でヒカルの
横っ面を殴った。唇の端が切れて血が滲んだ。
「…出ていけよ。」
声を震わせながらアキラがはき捨てるように言った。
だがヒカルは何も答えず、じっとアキラを見つめている。
アキラはベッドの上を少し後ずさった。ヒカルはその足首を掴んで引き寄せ
もう一度アキラの体をうつ伏せに組み伏せた。
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