交際 23 - 24
(23)
絶交か…可愛いことを言う。ヒカルはもう眠ってしまったのか、柔らかい寝息が
隣から聞こえてくる。
スウスウと小さな寝息が耳を、甘い香りが鼻腔をくすぐる。すぐ手の届く場所に
ヒカルが眠っているかと思うと堪らない。
『アカン!アカン!何のために一発抜いてきたんや!』
社は自分を叱責した。風呂上がりのヒカルは息が止まるかと思うほど、色っぽかった…。
あんなヒカルを見て、平静でいられるわけがない。そのヒカルが、息遣いや温もりを感じられるほど
間近にいるというのに…。
「…あかん……寝られへんわ…」
なるべくヒカルから遠ざかろうと、布団の端っこまで移動する。身体を丸めて、耳を塞いだ。
時間が経つのが妙に遅い。拷問のようだ。社は、朝まで一睡も出来なかった。
二日間徹夜してしまった。寝不足の頭でふらふらと食卓についた。目の前に座って
いるアキラも同様の御面相だ。
「……?」
一人元気なヒカルが不思議そうに二人を見比べていた。
(24)
その夜、前日と同じように二つ並んで延べられた布団を見て、アキラと社はげんなりとした顔をした。
それを見て、ヒカルはムッとした。昨日から二人は煮え切らない態度を見せている。ヒカルに
何か含むところがあるらしいのだが、それをハッキリと告げようとしない。それが気に入らない。
もう一つ気に入らないのは、二人がヒカルをのけ者にしていると言うことだ。アキラと
社は何か目で会話をしている。ヒカル一人を仲間外れにして、自分たちだけわかった風な
その態度に腹が立つ。
『なんでェ…こいつら…オレばっかのけもんにして…』
だいたいアキラがイヤだと言うから、自分は大人しくここで寝てるのに…。せっかく
合宿しているのに一人で寝たって面白くない。
結局、ヒカルに何も告げずに、大きな溜息を吐いてアキラが自室に戻り、社は
観念したような顔で布団に横になった。ヒカルは社に背中を向けて、頭から布団を
かぶった。眠ろうと努力したが、頭に血が昇っているせいかなかなか寝付けない。
暫くして、社が話しかけてきた。
「なあ…進藤…」
無視をしようかと思ったが、考え直した。ちょっと、子供っぽいと思ったのだ。
「…何だよ…」
声が不機嫌になるのまでは止められなかった。
「オマエ…塔矢とやっとるんやろ?」
はあ?なにを…?と、聞き返そうとして、ハタと気がついた。ヒカルはビックリして、
跳ね起きた。
「な、な、なにを…オ、オマエには関係ねえだろ…!」
狼狽えて声がひっくり返る。顔がカーッと熱くなった。
社もゆっくりと起きあがって、ヒカルを見つめた。
「関係なくない…オレ…オマエのこと好きやねん…」
あまりに真剣な声に、ヒカルは何も言えなくなった。
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