パッチワーク 23 - 24
(23)
夜もひどくうなされておばさんは四年生になるまでヒカルに添い寝していた。
ヒカルの家に遊びに行って一緒に昼寝をするときにはおばさんにヒカルがうな
されたら「大丈夫」って何回でも言って上げてと頼まれたこともある。だから
昼寝するとき手を繋いだりもした。私も母からヒカルから目を離さないように
言われし、ヒカルがまたいなくなるのが怖くて私はいつもヒカルのあとにくっ
ついて行くようになった。おじさんやおばさんも自分たちか私が一緒でなけれ
ばヒカルを外へ出さないようにしていた。おばさんがずっと添い寝をしていた
反動か5年生のときうちとヒカルのうちで一緒に海の民宿に泊まったときや6年
生の修学旅行でも人が一緒だと眠れないと言って廊下で寝ようとして先生に怒
られた。小学校に入ってから無責任な噂で惚けたおばあさんが孫と間違えたと
か男の人が自殺の道連れにしようとしたとかいろいろなことが耳に入ったけれ
ど私には身近すぎて母に事件のことを聞くことはできなかった、だから私は今
でも何があったか知らない。私にわかっているのはあの時ヒカルがどこにいる
のか私たちにはわからなかったこと、憶えているのはヒカルにもう会えないか
もしれないと言う恐怖感だ。 段々良くなっていったけれど独り言などは中学
になっても続いていた。
(24)
小学校のときのヒカルの影のあだ名は「誘拐された子」だったけれど、中学での影のあだ名は「あの加賀のお稚児
さん」だった。男の先輩や同級生たちが「女の子だったら告ってる」「加賀がライバルじゃあ」「加賀にばれたら
怖い」とかヒカルにはわからないように言っていたけれど多分加賀さんが好きだったのはヒカルじゃなくて筒井さ
んだ。中学の学区廃止・選択制をにらんで先生たちが進学実績を上げようとしてたのに合格圏より3ランクも下の
筒井さんと同じ高校を選んだ。高校でも威張りたいんだろうとか言っていた人も多かったけれど東京だけでなく埼
玉・千葉・神奈川の高校も選べるこの地域では1つのランクで10から20の高校が選べる。上下2ランクずつ約100
校の中から受験日などを考えて3から多い人は10校近く受験する。それなのに加賀さんは筒井さんと同じ高校しか
受験しなくて筒井さんが不合格のところも合格したのに筒井さんと同じ高校を選んだ。でも、噂のおかげで女子で
も男子でも中学の間にヒカルのそばに寄ってくる人はいなくて私にとっては加賀さんはありがたい存在だった。
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