Shangri-La第2章 23 - 29


(23)
入口に先端があてがわれ、今にも…、というところで緒方が口を開いた。
「聞いておくが、本当に、いいんだな?」
アキラは大きく頷いた。
「本当に、後悔しないな?」
「しない…から、はやく……」
繰り返される質問を封じようと、アキラが懸命に言葉を搾り出して
緒方を急かすと、緒方は黙って一気に奥まで突き入れた。

「あああぁ――――――っ!」
思わず溢れた大きな声にアキラは自ら驚いて、慌てて口元を押さえた。
自分の中に確かに存在する、奥深くまで埋められた緒方の感触に
全身を苛む熱が、際限なくポンプアップされているが
緒方は動こうとせず、アキラの尻を掴んだままだ。
嫌われたか、と不安が生まれ始めたころになって、
ようやく緒方はゆっくり腰を引き始めた。
「…んんっ……」
中全体を目一杯使って擦られる感触が、
しかもゆっくりと引き出されるのが堪えられないくらい好くて
挿れたばかりなのにもう弾けてしまいそうで
アキラは飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止めていた。


(24)
(まさか、またアキラを抱くことになるとは――)
挿入前の念押しは、アキラへの意思確認というよりは
緒方自身への再確認の意味が強かった。
確かに、手を離れた後のアキラに興味を持ったし、
また一時はその妖艶さに危険を感じ、踏みとどまったのも事実だ。
他人のものに手は出さない主義だという言葉もまた真実だが、
これだけ懸命に、縋るように求められて、
それでもアキラを突き放すことは、やはり緒方にはできなかった。

若いヒカルと比べられたくなかったし
久しぶりのアキラをじっくり味わいたいという理由で
最初から飛ばすのは止めておいたが、そのゆっくりした動作の中で
アキラの身体が少し強張っていることに気づいた。
「アキラ、どうかしたか…?」
動きを止めて声をかけた。よく見ると、シーツを握りしめた手が
力が入りすぎているのか、妙な白さだ。
「はぁっ………い、た……んん…」


(25)
「ん?痛いのか?」
「…ん…………」
行為が久しぶりで辛いのだろうか。確かに中はひどくきつい。
緒方はアキラを宥めてやろうと何度も背中に口付けた。
脇腹から胸へとそっと撫で上げ、
胸の先端を指の腹で優しく捏ね回すと、背中が強張った。
感じているのかと暫く続けたが、どうも様子が違う。
強張りはだんだんと酷くなり、唸り声まで漏れている。
(これは……、一度イかせてしまった方が良いだろうか?)
緒方はアキラの前に手を伸ばしたが、触れるかどうかのうちに
アキラはかなり悲痛な声で大きく叫んだ。
「アキラ、大丈夫か?どこが痛い?」
緒方は力を入れずに、そっとアキラを扱き始めた。
「……ぅぅ………お…きく、なりす…ぎ……て………ぅ……」
(――大きくなり過ぎて?それで中が痛いのか…?)
「じゃぁ、一回抜くぞ?少しだけ我慢して――」
「ちが……!ぅぅ………」
「ん?どうした?」
「…ボク………大きく…な、すぎて……いた、い………」


(26)
(そうか、そっちか………!)
緒方はぎゅっとアキラを握り締め、アキラは短く悲鳴を上げ
そのまま少し手を動かすと、叫びとも喘ぎともつかない声を
上げながら、緒方の手の中に精を放った。
吐き出されたそれは片手には余る程の量で、
指の隙間から次々と零れ落としながら、
緒方は何とかティッシュを手繰り寄せて拭った。
本当は飲み干すつもりでいたが、溜めたままの手を鼻先に持ってくると
随分溜まっていたのだろう、すえた濃い匂いがして
口にする気にはなれなかった。
アキラは自分で処理していないのだろうか?と下世話な心配が
一瞬、緒方の脳裏をよぎった。

アキラは弛緩して、緒方が腰に廻した手だけがアキラを支えていた。
ゆっくりと緒方が動くと、しばらくは大人しくしていたアキラは
喘ぎ始め、少しずつ嬌声が漏れ、だんだん大きくなった。
窘めようとアキラを呼ぶと、アキラは何度も緒方を呼んだ。
結局アキラは嬌声を抑えようとはせず、
途切れず呼ばれることに悪い気もしなかった緒方は
そのままアキラに呼ばれ続けていたが
それと同時に、他人のものになってしまったアキラを感じた。


(27)
遅い来る強烈な熱と、鈍く、しかし確実に存在する痛みと
その痛みが増幅されて弾けた、白い爆発の後のことは
アキラにとっては現実感がなくて、夢の中のようだった。
緒方はアキラの名を呼んでくれ、アキラが呼んだら返す言葉があり、
アキラが望めばそれに従った。

求めれば応じる、確かなぬくもり。甘い囁き。
「此処に在る事」のしあわせ―――
アキラは夢に見た幸せを、やっと感じていた。


「おがたさん、だいすき……」
脳裏に浮かんだその言葉は、声にはならずに零れ落ちた。


(28)
「おっかしいなー。やっぱ嫌われたかなー?」
深夜のアルバイトの休憩時間。
ヒカルは口をとがらせ、携帯を握りしめていた。
アキラから最後に電話が来たのは、1週間以上も前のことだ。
半端でない疲労から、アキラの声を聞きながら眠ってしまった。
既に2度、やってしまって、二度とも電話でイヤというほど叱られた。
流石に三度目はマズイだろうと思って、気を付けてはいたのに
アキラの声は低く優しくて、やっぱり眠りに誘われてしまった。
一旦電話を切ったアキラからかかって来た、その着信音で目が覚め
前のように怒鳴られるかと思って恐る恐る受けたら
アキラは、疲れているのに長々とごめん、と謝って、
もうこちらからは電話しないから、風邪を引かないよう
早く着替えてベッドで寝るようにと言うと
おやすみ、と電話を切ってしまった。
拍子抜けしたものの、本当に疲れていたヒカルはそのまま眠った。


(29)
以降、毎日のようにあったアキラからの電話は一度もない。
メールは、2〜3日して一回だけ来た。
無理をしないように、時間が出来たら何時でもいいから
電話が欲しい、という内容が、とても簡潔な文章で書かれていて
すごくよそよそしい印象を受けた。
その上、電話が一切ないのは、流石に少し気になる。
バイト中に電話を使うと、あとで色々と冷やかされるのだが、
もうそれを気にしてもいられない。
それにいつもなら、この時間でもすぐ電話を取るのだが……

「進藤君、そろそろ時間だよォー」
ヒカルははっと顔を上げた。
「あっ、はーい!今行きまーす!」
慌てて電話を切って、携帯を置きに戻った。
結局、アキラと話すことはおろか、
留守電にメッセージを残すことさえ出来なかった。



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