平安幻想異聞録-異聞- 232


(232)
風がやんで起き上がってみると、目の前にあるのは、昔は綺麗な屋敷だったはずの
瓦礫の山。
石に埋まった井戸。
周囲には、焼け焦げた匂いが漂い、紙のようにカサカサに乾いた肉蛇達の残骸が
そこやここに、数えきれないほど転がっている。
その地面にポツリ、と黒い染みが出来た。
続いて、ポツリ、ポツリ、とその数は次々と……。
雨が降りだしたのだ。
ヒカルは空を見上げた。抜けるような秋の青空が広がっている。
だが、雨足はどんどん強くなっていくのだ。
雨に触れた異形の残骸が、大地に溶けるようにして、次々と消えていく。
降り続く雨は、大気にこもっていた瘴気を押し流し、呪言の痕跡を洗い流し、
この場所に染みついた人の怨念までも消し去っていくようだった。
あたり一面に、新鮮な水の匂いが満ちた。
時ならぬ不思議な雨は、まるで天からの贈り物のように地を打ち続ける。
二人とも、あっという間にびしょ濡れになってしまった。
今、生きてこの場に立っているのは、ヒカルとアキラ、そして少し離れて、
雨の中、怪我にもがき苦しむ二頭の白馬。
ヒカルはその馬に近寄った。二頭とも足が折れている。足が駄目になっては
馬は生きていけない。
「可哀相な事しちゃったな」
つぶやくヒカルに、アキラが笑った。
「大丈夫だよ」
言ったアキラの手が不思議な動きを見せた。



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