平安幻想異聞録-異聞- 237


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あの騒ぎの後、座間の姿を見たものはいない。遺体も発見されなかった。
平安京の右京のはずれのある家からは、今回の呪詛に関わったらしい陰陽師が、
何者かに切り裂かれ、食われたような無残な姿で発見された。
内裏では、座間がいなくなった事により空位になった地位を巡って、すでに
貴族達の権力争いが起きているという。
事件の後、賀茂アキラが近衛の家に来て、何が起こっていたのか、ヒカルの
知らない部分を説明してくれた。藤原の血を引く梅壺女御、その彼女と
帝の寵愛を競う桐壷女御。座間家の血を引くその桐壷が、三人の子を
もうけながら男子に恵まれなかった事。反対に、それまで懐妊の気配のなかった
梅壺が初めて宿した腹の中の子が、易占によって男子であると判ぜられた事。
もし本当に梅壺の子が男子であり、皇太子となれば、その血筋である藤原派閥の
権力はより揺るぎないものになるだろう。反対に桐壷を推していた座間派の
零落は否めない。だからこそ、座間は魔物と契約を結び、呪詛によって、
梅壺女御とその腹の子の命を奪おうとしていたのだ――。
「まわりくどい言い方をしないで説明するとね、君は梅壺女御様を殺める呪法の
 ための、魔物の供物にされかかったんだよ」



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