平安幻想異聞録-異聞- 238
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アキラにそう説明されてヒカルは、自分がいつのまにか、思いもしないような
大きな事件に巻き込まれていたことに気付き、改めて震え上がった。
一人になってからヒカルは、座間邸に自分が捕らわれた最初の日、座間が
言っていた事を思い出した。
『わしがお前を使って、佐為の奴や、行洋の失脚でも狙うとおもうたか?
そのようなこと、わざわざお前ごとき小者を使わんでも、いくらでも
やりようはあるわ』
だが結局これでは、座間は梅壺女御を呪殺し、政治的権力を守るために
ヒカルを利用しようとしたことにならないだろうか?
大貴族として高い矜恃を持っていた彼を、そんな風に、前言をひるがえさせる程に
追いつめたものとは、いったい何なのだろう?
ヒカルは、座間をそこまで追いこんだ、人の心の闇について思った。
そして、その人の心の闇を生み出した、あの内裏という場所が内包する、
なお濃い闇の深さを思った。
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