クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 24
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「じゃあ、この痣とかは、妖しのせいなんだな」
自分でやるからいいと云うのに、光は強引に明を座らせテキパキと水を用意して、
固く絞った手拭いで明の全身を拭いてくれていた。
下袴を外し、微妙な部分にまで手を差し入れて他人に拭かれるのは恥ずかしかったが、
明はこうして光のなすがままに扱われるのが嫌いではなかった。
邪念のない手つきで、ごしごしと清められていく感覚が心地よい。
「うん」
「そうか、良かった。オレはてっきり・・・」
「夜盗にでもやられたと思ったかい?」
「ウン。でも、どっちにしたってオレが来たからにはもう大丈夫だ!
オレがそいつ倒して、オマエ護ってやるから」
たすき掛けした腕でジャッと水を絞り、笑顔で胸を叩いた光に明は溜め息をついた。
「簡単に言ってくれるね。ボクでも対処出来ない相手に、
キミがどうやって勝とうっていうんだい」
「この間一緒に妖し退治した時は、オマエに貰った御神刀で倒せたじゃん。
あれもう一遍貸してくれよ。夜になってそいつがオマエの中から出てきたら、
オレがやっつけてやる」
「あの御神刀は宮中に代々伝わる神宝。前回は都の危機ということで
特別に使用を許可されたが、一介の陰陽師のためになど軽々しく持ち出せる
ものじゃない。それに、もしキミが妖しの立場だったら、自分が刀で斬られる
かもしれないとわかっている状況で外に出ようだなんて思うかい?
・・・ずっとボクの体内にいれば安全なのに」
「う、それもそうだな。ってことは・・・じゃあどうすりゃいいんだよ!?」
「何か別のやり方を考える必要がある。未熟なボクでは対処出来なかったが、
他の陰陽師・・・たとえば倉田さんにこの状況を知らせれば、あるいは・・・」
明は目の裏に、陽気で騒々しいが腕は立つ先輩陰陽師の姿を思い浮かべた。
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