白と黒の宴2 24
(24)
社が宣言した通り、対局が始まって程なく、越智が投了した。
「北斗杯のメンバーがこれで決まったな。」
という代表戦監督の渡辺棋士の言葉を、アキラは複雑な思いで聞いていた。
強い自信を見せていたとはいえ、社は全神経を対局に集中させ、最初から厳しい手で
あっという間に越智を追い詰めていった。
アキラは越智に対して多少の負い目があった。
去年のプロ試験の時の「あなたはボクを進藤の実力を計る物差代わりにしている」という
越智の怒りは当然のものだ。
今回の件も、越智を追い詰め、社との決定戦を越智に望ませてしまったのには少なからず
自分に責任があるとアキラは感じていた。
あの頃より越智は強くなったと思う。だが目の前で打ち交わされる対局は
二人の実力の差をより鮮明に残酷に浮き彫りにしてしまった。
そんな事を考えるアキラの隣で、ヒカルが目を輝かせて社の一手一手に反応していた。
できれば自分もヒカルと同じように興奮し、ヒカルと社と3人で中国と韓国の棋士らと
戦う事に純粋にときめきたかった。
終局後、三人で出版部での雑用を済ました後しばらく廊下でヒカルが社と何か話し込んでいた。
どういう話題で意気投合しているのか分からないが、会話する二人の間に笑顔がこぼれている。
それを見てアキラは唇を噛み、両手を握りしめた。
無邪気に社と会話をしているヒカルに何だか無性に腹が立ったのだ。
|