失着点・龍界編 24
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「先生、何故また、こんな店に…?」
ふいに沢淵は尋ねて来た。
緒方に別の目的があると見抜いているようだった。
「…ちょっと、人に教えてもらってね…。」
棋士達の間で時々この手の店の話は聞く。対局にいろいろなものを
賭けさせる。
高額な金、女、そして少年や子供。だが当然、一見の客には裏の顔はすぐには
見せない。カマをかけてみる。
「ここには“子猫”がいるのかい?」
「さあ、何の事かな。」
「そうか。なら、いいんだ。」
はぐらかされた。
暫く様子を見るしか無い。
アキラは学校を出て駅前の碁会所に行く前に囲碁サロン「道玄坂」に
立ち寄っていた。ヒカルに携帯の事を教えたかったのだが、
退院しただろうから病院では会えない。
かといってヒカルの自宅に行く訳にはいかない。
それで以前にヒカルを探す時にいろいろ碁会所の場所を教えてくれた
ここに来てみた。ヒカルが立ち寄っているかもしれないと思ったからだ。
そこに和谷と伊角がいた。
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