ルームサービス 24 - 25
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アキラも振り返すが、ヒカルと一緒にジャグジーにつかってる男と
そばのベンチに座ってる男の視線がヒカルにねちっこくはりついているのに
気が付いた。確かに、視線がはりつくのはわかる。
髪が濡れてかたちのよい頭にはりつき、成長途上ののびやかな肌が水滴をした
たらせている。表情は無邪気なのに、驚くほど色っぽかった。
「蚊がとまったくらいでわかるってことはえらく敏感だな、しかもそんな肌が一
日で跡を消す。で、アキラ君の背中にはそんな跡が残ってると。んでアレだ。アキラ君、
大変だな」
「だからナニがいいたいんですか?」
「まあ、せいぜい翻弄されるこった」
「塔矢・・・オレ先およぐぜー」
ジャグジーからあがってヒカルが声をあげた。
「あ・・・うん」
言葉を濁す。ほそく白い体がしなやかな弧を描き、水面に
消えて、波紋が広がる。
・・・塔矢、塔矢!キモチいいぜ・・・!!
勢いよく手をふるヒカルは確かに光を放っていた。
アキラの贔屓目ではない。本当に注目が集まっていた。
それはただ単に容姿のすぐれた少年に集まる注目だけではなかった。
アキラにはわかった。
ジャグジーの男が、ゆらりと、プールの方へ動いた。
その視線にはあきらかな熱がこもっている。
まるでエサをちらつかされた犬のようだ。
そう思った。
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ガランとした部屋の中で犬はぐちゃぐちゃになった机の上を一身
に舐めていた。
サンドイッチにケーキ、それらはさきほどまでヒカルの体の上にのせ
られていたものだ。
あきれる。
(そこまで狂うか・・・・)
だが狂うのだ。この男はヒカルをひと目見ただけで、正体不明の子供の
部屋にノコノコやってきて、そこで変態プレイをしているのを見ても
逃げ出したりせず、犬と言われて従い。他人の肛門に入っていた
クラムチャウダーを全てすすりとったのだ。
アキラではない、この男を狂わせたのはヒカルだ。
「犬」
侮蔑をこめて言った。
犬が顔をあげる。
「片付けが終わったら、そのクリーム、それとそこの箱に入ってる
手袋をつけてバスルームに来ていい」
アキラは笑った。
「素手じゃなければ進藤にさわってもいい」
いつも最初に入れるときはさすがにつらそうだ。眉間にしわをよせて
かわいらしい唇をゆがめて、息を吐く。
以前より成長したとはいえ、自分より小さなからだのそこにそれを入
れていくときは、まっさらな花びらをむしって散らしているかのような
気がする。
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