失着点・龍界編 24 - 25


(24)
「先生、何故また、こんな店に…?」
ふいに沢淵は尋ねて来た。
緒方に別の目的があると見抜いているようだった。
「…ちょっと、人に教えてもらってね…。」
棋士達の間で時々この手の店の話は聞く。対局にいろいろなものを
賭けさせる。
高額な金、女、そして少年や子供。だが当然、一見の客には裏の顔はすぐには
見せない。カマをかけてみる。
「ここには“子猫”がいるのかい?」
「さあ、何の事かな。」
「そうか。なら、いいんだ。」
はぐらかされた。
暫く様子を見るしか無い。

アキラは学校を出て駅前の碁会所に行く前に囲碁サロン「道玄坂」に
立ち寄っていた。ヒカルに携帯の事を教えたかったのだが、
退院しただろうから病院では会えない。
かといってヒカルの自宅に行く訳にはいかない。
それで以前にヒカルを探す時にいろいろ碁会所の場所を教えてくれた
ここに来てみた。ヒカルが立ち寄っているかもしれないと思ったからだ。
そこに和谷と伊角がいた。


(25)
アキラは彼等には一瞥しただけでヒカルが居ない事を確認すると
出て行こうとした。
「…待てよ!」
和谷がアキラを呼び止める。
「…話があるんだ。」
3人で外の近くの公園に行く。夕暮れにはまだ間があったが他に人影は無い。
ヒカルが突然アキラと失踪した事は和谷と伊角にとっても大きな衝撃だった。
原因が自分達の所行にある事は間違い無かった。
一時期は自分達も囲碁を辞めるべきではないかと真剣に考えた。
戻って来た二人が囲碁界に今まで通りに居られると分かり、
勝手だとは思ったが安堵した。
そして自分達も結局、ヒカルとアキラに一生恨まれ、軽蔑されても、囲碁は
捨てられない。それが和谷と伊角が出した結論だった。
それだけにアキラが何もかも捨ててヒカルと消えた事が信じられなかった。
「進藤は何も言っていないかもしれないけど…オレ達は…進藤に…」
「聞く必要は無い。」
ピシャリとそう言われて和谷と伊角はハッとなってアキラを見る。
「進藤が言わない事はボクは聞かない。進藤が許したことならボクも許す、
それだけだ。」
そう言われてしまうと何も言えなかった。それでも和谷は食い下がった。
「教えてくれよ。何であんな事ができるんだよ。」
説明する必要は無い、というふうにアキラの目は物語る。



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