初めての体験 24 - 26
(24)
行洋の手がヒカルの体を荒々しくまさぐった。その乱暴なやり方にヒカルは喘いだ。
ヒカルは涙を流しながら、行洋に謝り続けた。
「ごめ・・・なさ・・・せん・・・せ・・・ごめ・・・」
その泣き声が行洋をますます煽る。
行洋は自分が冷静さを失っているのを自覚していた。ヒカルの喉元に強く吸い付き、
徐々に下に移動する。行洋がヒカルの痣を辿った。アキラがつけた痣を・・・。
乳首を口に含み、舐めあげる。両の乳首を交互になぶり、弄ぶ。
「ああ!先生、やだ!」
ヒカルが身悶えた。行洋は、かまわず、そのまま続けた。涙があふれてきた。
ヒカルは歯を食いしばって耐えた。その口をこじ開けて、行洋は自分の指をつっこんだ。そうして、低い声でヒカルに命じた。
「舐めなさい。」
ヒカルは怯えながら、懸命にその指を舐めた。もう、逆らうことはできなかった。行洋の指が、ヒカルの唾液でぬらぬらと光った。
行洋はヒカルを犬のように、四つん這いにさせた。そして、後ろに、十分に
湿らせた指を一本ずつ入れた。ヒカルの体が小刻みにふるえた。
「せん・・せい・・・ゆる・・して・・ごめ・・」
ヒカルの耳に衣擦れの音が聞こえた。堅い物があたった。ヒカルは必死で
許しを請い続けた。涙が畳の上にぽたぽたと落ちた。
だが、行洋はヒカルの腰を強く掴むと、無情にもそのまま突き入れた。
「───────────────!!」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。
(25)
行洋に揺さぶられている間も、ヒカルは泣きながら「ごめんなさい」を
繰り返した。そんな、ヒカルの怯える様がますます行洋を残酷にした。
泣きながら、ヒカルが達した時、体の中に熱いものを感じた。
行洋が衣服を整えてくれている間も、ヒカルは俯いて、泣きじゃくっていた。
行洋は後悔した。いくら何でもやりすぎたのではないか?・・・と。
最初は軽くお仕置きをするだけのつもりだったのだが・・・。
どうして、ここまでムキになってしまったのだろうか・・・。
行洋は、ヒックヒックとしゃくり上げているヒカルの背中を優しくさすった。
「すまなかったね・・・。でも、大人を甘く見ると怖い目に遭うってわかったろう。
もう、二度とこんなまねをしてはいけないよ。」
いつもの穏やかな物言いに、ヒカルはコクンと頷いた。幼い子供のような仕草だった。
「いい子だ。」
行洋が、愛おしむようにヒカルの頭を撫でた。俯いたヒカルの口元に、
小さな笑みが浮かんでいることには気づかなかった。
塔矢先生・・・さすが現代の棋聖。引退したとはいえ、未だ王者の貫禄。
ヒカルがシステム手帳に書き加えたとき、ちょうどアキラが来た。いつもの
碁会所で待ち合わせをしていたのだ。アキラが息を切らせて、ヒカルに言った。
「進藤。昨日はごめん。急に取材が入ってしまって。」
「仕事ならしょうがねぇよ。気にすんなって。」
と、ヒカルがにっこり笑ってアキラに言った。そして、アキラをじっと見つめた。
「な、何?進藤、急にじっと見つめたりして。」
アキラは赤くなって狼狽えた。ヒカルは大きな目でアキラを見つめながら
「塔矢って、塔矢先生によく似てんなぁ。」
と、感心するように言った。
「え?そうかな?ボクはお母さん似だって、よく言われるけど・・・。」
アキラは面食らって、まじまじとヒカルを見返した。『全く・・・進藤は
唐突だな』と思った。
「外見の話しじゃねぇよ。性格の話し。碁の打ち方とか・・・さ。」
ヒカルはうっとりとアキラを見つめ続ける。
「だとしたら、嬉しいな。ボクはお父さんが目標なんだ。」
アキラが微笑んだ。
「きっと塔矢先生みたいになるよ。楽しみだな。ホント!」
ヒカルは心底嬉しそうに言った。
<終>
(26)
ヒカルは壇上にあがる門脇を見た。ヒカルは彼を知っていた。院生だった頃、
門脇に頼まれて、対局したことがあった。そこそこ強い相手だと思って、佐為に打たせたのだ。
だが、ヒカルの予想に反して、門脇はかなり強かった。もし、佐為ではなく、自分が
打っていたら、果たして勝てたかどうか。いや、きっと、負けていたであろう。
ヒカルは、門脇が元学生三冠であったとは、知らなかった。
「プロになるくらい強かったんだ・・・。」
通りすがりに打っただけの相手に、ヒカルは興味を持った。
「おじさん!」
「おじさんだとぉ?」
いきなり背後から声をかけられ、門脇が顔を引きつらせながら、振り返った。
目の前に小柄な少年が立っていた。大きな瞳をくりくりさせて、門脇を笑って見ていた。
「おじさん・・・門脇さん、おめでとう。」
「あ・・・ありがとう。」
門脇は少し、狼狽えた。一年前、この目の前の少年に、こてんぱんにやられた
時のことは、今も鮮やかに記憶に残っている。
その時、自分がいかに甘かったのか思い知った。一念発起し、一から勉強を
やり直した。
「門脇さん、プロになったんだ。道理で強いと思った。」
ヒカルが、無邪気にニコニコと笑った。
「うん・・・。お前・・・君もね。」
門脇は照れながら答えた。去年、新聞でヒカルがプロ試験に合格しているのを見た。
そんな相手を肩慣らしに使おうとしていたとは・・・。と、苦笑した。
しばらく、たわいない世間話をして、少し打ち解けた頃、ヒカルが、門脇に切り出した。
「門脇さん・・・オレ、前に門脇さんのお願いきいてあげたよね?」
「うん?そうだったな。」
「今度はオレの頼みきいてくれないかな?」
門脇はおいおいと思った。普通、こういう場合は逆じゃないのか?合格祝いに
オレの頼みをきいてくれるものだろう。だが、実際ヒカルに頼みをきいて
貰ったのは事実だし・・・。ムキになるのも大人げない。
「だめ?」
ヒカルが、上目遣いで見つめてくる。吸い込まれそうな瞳だった。
門脇は、思わず頷いてしまった。
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