Shangri-La第2章 24 - 27


(24)
(まさか、またアキラを抱くことになるとは――)
挿入前の念押しは、アキラへの意思確認というよりは
緒方自身への再確認の意味が強かった。
確かに、手を離れた後のアキラに興味を持ったし、
また一時はその妖艶さに危険を感じ、踏みとどまったのも事実だ。
他人のものに手は出さない主義だという言葉もまた真実だが、
これだけ懸命に、縋るように求められて、
それでもアキラを突き放すことは、やはり緒方にはできなかった。

若いヒカルと比べられたくなかったし
久しぶりのアキラをじっくり味わいたいという理由で
最初から飛ばすのは止めておいたが、そのゆっくりした動作の中で
アキラの身体が少し強張っていることに気づいた。
「アキラ、どうかしたか…?」
動きを止めて声をかけた。よく見ると、シーツを握りしめた手が
力が入りすぎているのか、妙な白さだ。
「はぁっ………い、た……んん…」


(25)
「ん?痛いのか?」
「…ん…………」
行為が久しぶりで辛いのだろうか。確かに中はひどくきつい。
緒方はアキラを宥めてやろうと何度も背中に口付けた。
脇腹から胸へとそっと撫で上げ、
胸の先端を指の腹で優しく捏ね回すと、背中が強張った。
感じているのかと暫く続けたが、どうも様子が違う。
強張りはだんだんと酷くなり、唸り声まで漏れている。
(これは……、一度イかせてしまった方が良いだろうか?)
緒方はアキラの前に手を伸ばしたが、触れるかどうかのうちに
アキラはかなり悲痛な声で大きく叫んだ。
「アキラ、大丈夫か?どこが痛い?」
緒方は力を入れずに、そっとアキラを扱き始めた。
「……ぅぅ………お…きく、なりす…ぎ……て………ぅ……」
(――大きくなり過ぎて?それで中が痛いのか…?)
「じゃぁ、一回抜くぞ?少しだけ我慢して――」
「ちが……!ぅぅ………」
「ん?どうした?」
「…ボク………大きく…な、すぎて……いた、い………」


(26)
(そうか、そっちか………!)
緒方はぎゅっとアキラを握り締め、アキラは短く悲鳴を上げ
そのまま少し手を動かすと、叫びとも喘ぎともつかない声を
上げながら、緒方の手の中に精を放った。
吐き出されたそれは片手には余る程の量で、
指の隙間から次々と零れ落としながら、
緒方は何とかティッシュを手繰り寄せて拭った。
本当は飲み干すつもりでいたが、溜めたままの手を鼻先に持ってくると
随分溜まっていたのだろう、すえた濃い匂いがして
口にする気にはなれなかった。
アキラは自分で処理していないのだろうか?と下世話な心配が
一瞬、緒方の脳裏をよぎった。

アキラは弛緩して、緒方が腰に廻した手だけがアキラを支えていた。
ゆっくりと緒方が動くと、しばらくは大人しくしていたアキラは
喘ぎ始め、少しずつ嬌声が漏れ、だんだん大きくなった。
窘めようとアキラを呼ぶと、アキラは何度も緒方を呼んだ。
結局アキラは嬌声を抑えようとはせず、
途切れず呼ばれることに悪い気もしなかった緒方は
そのままアキラに呼ばれ続けていたが
それと同時に、他人のものになってしまったアキラを感じた。


(27)
遅い来る強烈な熱と、鈍く、しかし確実に存在する痛みと
その痛みが増幅されて弾けた、白い爆発の後のことは
アキラにとっては現実感がなくて、夢の中のようだった。
緒方はアキラの名を呼んでくれ、アキラが呼んだら返す言葉があり、
アキラが望めばそれに従った。

求めれば応じる、確かなぬくもり。甘い囁き。
「此処に在る事」のしあわせ―――
アキラは夢に見た幸せを、やっと感じていた。


「おがたさん、だいすき……」
脳裏に浮かんだその言葉は、声にはならずに零れ落ちた。



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