平安幻想異聞録-異聞- 247


(247)
折り重なって、ふたり、情事の後の呼吸を整える。
その額に貼り付く金茶の前髪を優しく掻き分け、佐為はヒカルの眉間に
ゆるく口付けをする。そのまま、鼻梁をつたって降りて、度重なる口付けに
紅く染まった唇にたどりつく。
口角をずらして重ねて、舌を差し入れ、そのまま、ふたりは慈しみ合うように、
互いの舌をからめて静かに愛しあう。
体をしっとりと湿らせていた汗も少し冷えたころ、ヒカルが言った。
「佐為、もっと……」
「だめですよ、今日はもうおやすみなさい」
「でも、佐為の、もうオレの中で――」
固くなってんじゃん。と、つぶやきながら、ヒカルはまだ自分の中にある佐為の
モノを意識して締めつけてみせる。
「ヒ〜〜カ〜〜ル〜〜」
ちょっと辛そうな顔をして、自分を睨みつけてくる佐為がおかしくて、ヒカルは
声を立てて笑った。
「あぁ、でもそうかもなー。佐為はもう年寄りだしー、もう一回は無理かもなぁ」
「ヒカル、そういうこと言うと、本当に泣いて頼んでも放してあげませんよ」
「いいって、いいって」
そして、ヒカルは照れながら、それでも佐為の目をまっすぐ見つめてつぶやいた。
「朝まで、ずっと抱いててよ」


やがて、ヒカルが、帝のいいつけにより
遠い出雲まで使いにやらされ、
その間に、いつの間にかお膳立てがされていた
帝の囲碁指南役をめぐる囲碁対局に、佐為が赴き、
不当な汚名を着せられて、入水することになるのは、
それから約2年後の話である。



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