日記 247 - 249


(247)
 ヒカルはそれ以上何も言わなかった。顔を伏せたまま、身体を震わせている。
――――――ボクはバカだ………
アキラは唇を噛みしめた。
 何でも先回りして、ヒカルの前から危険なものを遠ざけていればいいと思っていた。ヒカルが
大切だから…傷つくところを見たくなかったから…そうやって守っていればいいと思っていた。
ヒカルは自分で一生懸命立ち上がろうとしていたのに、それに気付いていなかった。
「…………ゴメンよ…」
今度は、ヒカルも怒らなかった。代わりに顔を少し、アキラの方へ向け
「オレも、心配かけてゴメン………」
と、謝った。
 静かな波の音と少し遠くで聞こえるはしゃいだ声。歓声が上がるたび、綺麗な火花が小さく
夜空に散った。
「帰ったら、オレ達もしような…花火…」
ヒカルの手が、砂の上の自分の手に重なった。


(248)
 「ここもダメなら、駅に戻って待合室で夜明かししよう…」
アキラのこの提案にヒカルは怒ると思っていた。だが、意外にもヒカルは「いいぜ」と笑って
了承した。
「でもオレ、駅より海がいいな…」
青白い顔に似合わない明るい笑顔。
 既に、四件断られている。ピークは過ぎているものの夏を楽しむ人はまだまだ多いらしく、
ヒカルが最初に言ったように、何処の宿もいっぱいだった。
「飛び込みでなんて、無理だよ。ぜーったい、ムリ!海で野宿決定!」
ヒカルは、笑って言った。
「そうだね。無謀だったかも…」

 「ここで待ってて…」
ロビーの椅子にヒカルを座らせて、フロントに向かった。ヒカルは野宿でもいいと言ったが、
どう考えてもそれは、彼には酷だ思った。笑ってはいるが、顔色はあまりよくない。衝動的に
連れ出してしまったことを、今ごろになって後悔した。

 アキラがヒカルの元へ戻ったとき、彼は椅子に身体を沈めるようにして瞳を閉じていた。
気配を感じたのか、ヒカルがゆっくりと目を開ける。アキラはそれを待った。
「とれたよ。」
アキラがそう告げると、ヒカルは安心したようなどこかガッカリしたような複雑な表情を浮かべた。


(249)
昨日、塔矢と海に行った。
突然何言い出すんだコイツとか思ったけど、行ったら結構楽しくて、何かスッキリした。
モヤモヤが風に吹き飛ばされたみたいな感じ。
宿は四件ことわられて、五件目でやっとゲットできた。
オレは海で野宿も楽しそうだと思ったんだけどな………………
四件ことわられたのは、満室もあったかもしんないけど、もしかしたらオレたち家出少年に見られたかも………
オレは大きめのDAYバッグだからまだしも、塔矢なんてセカンドバッグ一個だよ。
…………イヤ、だから泊めてもらえたのかな?
どう見てもアイツは家出するようには見えネエもんな。
真面目そうだし、人当たりいいし、冷静そうに他のヤツには見えるかもしんねえ。
ちぇ…ずるいよな…

泊まった部屋は和室で、もう布団がしいてあった。
海が見える大浴場があったらしいけど夜でどうせ見えないし、ちょっとつかれてたので
備え付けのお風呂で簡単に汗を流した。
最初は別々の布団に寝たんだけど、二人でいるのに別々に寝るのもヘンな気がして
オレは結局塔矢の布団に潜り込んだ。
エッチはしなかった。


帰る前にもう一度二人で海を散歩した。
「今度は泳ごうねと」塔矢が言ったから、オレも「うん」って答えた。
みんな楽しそうで、真っ黒に日焼けして、オレが自分と比べていたのをアイツは気付いていたみたい。

何か、久しぶりに書くとキンチョウする。
スゲー間だがあいたけど、オレ、ここには楽しいことしか書きたくない。
フツーの日記と違うけど、いいよな。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル