平安幻想異聞録-異聞- 248
(248)
<結び>
パチリ…と盤上に石の打たれる音がする。
千年前と変わらぬその音。
だが今、佐為は、その石を自らの手に持つことはできない。
目の前で、碁盤に石を放つのは、金色の前髪を持つ少年。
その名を進藤ヒカルという。
少年が自分の白石にカカって来たのを見て取って、
佐為は次に石を打つ場所を扇で指し示す。
――それにしても、なんという偶然であることか――
名前が同じだけではない。その面差しも、自分を見返す瞳の率直さも
千年の昔に自分のすぐそばにいたあのヒカルを思わせた。
輪廻転生というものが本当にあるのなら、
まさにこのヒカルはそうなのかもしれないと思わせる程に。
(だが、本当にこのヒカルがあのヒカルの転生なのだとしても関係ないこと)
前世は前世、今生は今生だ。
近衛ヒカルと、進藤ヒカルは、似ているけれどやはり別人だと思う。
近衛ヒカルはこれほど碁にのめり込むことはなかったし、
反対に進藤ヒカルは、近衛ヒカルほど自分を殺すことはうまくない。
それに、今の佐為には碁石に触れることができないのと同様、
ヒカルに触れることが出来ないのだ。
だから、もし、ヒカルとヒカルが同じ魂を持っていたところで、
何の意味があるだろう。
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