平安幻想異聞録-異聞- 249


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(だけど、それでも本当にこのヒカルが、あの検非違使の少年の
 生まれ変わりであると言うのなら…)
と、佐為は思う。
――今生のヒカルを泣かすような真似だけはすまいと。

千年前、入水してからもしばらくは、自分は霊となって、京の街を
さまよっていたから、出雲から帰った近衛ヒカルが自分の死を聞き、
どんなに悲しんだか知っている。
出会った頃より大人びた顔立ちに変わった、あの検非違使の少年が、
誰も打つ人のいなくなった碁盤の前に泣き崩れて
「オレが、ついてれば…」
とつぶやいて、涙を落としたのを知っている。

だからと、佐為は思う。
せめて、このヒカルと同じ顔をした少年を泣かせるような事は、
決してするまいと。
……彼の前から、突然消えて、涙を落とさせるようなまねだけは、するまいと。



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