誘惑 第三部 25
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「おまえのパジャマ、借りるぜ?」
言いながら引き出しから引っ張り出したパジャマを着る。普段はジャージやTシャツで寝てるので何
だかヘンな気分だった。塔矢のパジャマ。塔矢の匂いがする。
それから、ベッドに潜り込むと、アキラが抱きついて頬にキスしてきた。眩暈がするほど幸福だと感じ
た。このまま二人で抱き合ったまま朝まで眠っていられるなんて。うっとりと夢見心地になったヒカル
から、アキラの身体が離れる。
怪訝な顔つきでアキラを見るヒカルに、アキラが言う。
「ねえ、進藤、パジャマ脱いでよ。」
「…ん?」
「だって折角キミがここにいるのに、キミが感じられない。」
横になったまま、ヒカルをじっと見つめて、続ける。
「キミを一番近くに感じていたいんだ。服なんか邪魔だよ。」
「んー…」
それもそうかも、と思ってヒカルは身体を起こし、パジャマを脱いで下着一枚でアキラに寄り添おうと
した。が、それでもまだアキラは足らずに文句を言った。
「全部。」
何を言うんだ、こいつは、と、ムッとした顔でヒカルはアキラを見た。
「じゃあ、おまえは?」
「ボクのも脱がせて。」
甘えたような声でアキラが言う。
「おまえなあ…」
「着せたのはキミだろ。ホラ、」
そう言って両手を差し伸べる。
ボタンを一つ一つ外して行くと、何だかヘンな気分になってくる。
ましてや下も全部脱がせろなんて、オレにも全部脱げなんて、どういうつもりだ、こいつは。
何となく目をそらせながら服を脱がせていくヒカルを見て、アキラはクスクスと笑った。
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