平安幻想異聞録-異聞- 25
(25)
しばらく、ヒカルは佐為の整った顔立ちを眺めながら、今見た夢の
中身を反芻していた。
そういえば、あの竹林で失くした父の形見の太刀は、結局そのまま
行方知れずになってしまった。
ヒカルは努めて何でもないことのように口を開いた。
「なぁ、佐為。あの日さぁ、オレが受けたのが、ただの暴行じゃないって、
おまえはもう判ってんだろ?」
佐為は一瞬迷うように目を細めたが、心を決めたように答えた。
「――そうですね。ヒカルの場合、普通の狼藉を受けただけでは触れられることの
ないような場所が、むごたらしいことになっていましたから」
「………」
「忘れておしまいなさい。それが1番です。そのような卑怯な真似をするような
やからは、天神様が見ていて、そのうち必ずバチを与えて下さいますよ」
「天神様って、菅原の一族じゃん。それがおなじ菅原姓のあいつに、
バチなんか下してくれるかなぁ」
「ヒカル…」
「座間と菅原だよ。オレにこんなことしたの。だから、佐為も気をつけろよな。
あいつら、お前にも何するかわかんないぜ。あと賀茂にも気をつけるように
言っとかないと。藤原行洋様には、さすがに直接なんかするとも思えないけど」
「人の心配はいいですから、今は自分の体を休めることをお考えなさい」
「佐為……あのさぁ」
「なんです?」
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