平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 25


(25)
「おまえ、…ん…朝からなんか、変だよ」
ヒカルは小柄な体で佐為の体を後ろに押し付け、のしかかるようにしながら、
上下に腰を揺らし、その動きを続けるために佐為の首に手を絡めている。
ヒカルが動きやすいように膝を曲げ、腰を落とすようにしてやると、
いいところに当たったのか、眉間をよせたヒカルの口から小さく喘ぎが漏れた。
どうしたら、説明できるだろう。
ヒカルに手を伸ばすことが怖いのではない。ヒカルに手を伸ばし、それだけでは
足らずにどこまでも貪欲にヒカルを欲してしまう、自分自身が恐ろしいのだと。
「オレがいるのに、寂しいのか?」
潤んだ瞳でまっすぐに見つめてくるヒカルを見返す。
自分の長い髪がさらさらと、川の流れにほどかれて、蛇のようにヒカルの体に
絡まっていた。
体に流れて当たる水の冷たさと、ヒカルの体の熱さが対照的で、なぜだか切なかった。
気付けば、ヒカルをきつく掻き抱いていて、その肩口に顔をうずめるようにしていた。
結局、恐れながらもこうしてヒカルに手を伸ばさずにはいられないのが、自分の
弱さなのだ。
「オレ達、昨日ここに来てから、してばっかだな」
ヒカルが、佐為もようやっとその気になってきた事が嬉しいという表情で、
語りかけてくる。
「なんか、冬の時のこと思い出すよ」
佐為も、そのヒカルの言葉に思わず笑みをもらした。
冬、特に一月は行事が多く、警護役のヒカルはいちいち雪道を佐為の送り迎えに
出勤するのが面倒で、佐為の家に泊まることが多かった。また、せっかく何もない
日でも、雪に道を閉ざされてヒカルが自宅に帰れないような事も幾度か重なり、
自然、共寝をする機会が増えた。そのつもりがなく、ただ並んで寝ているだけの
時も、寒さに暖を求めていつのまにか相手に手を延ばし、気がつけば体を重ねていた。
終わった後、お互いに顔を見合わせて笑ってしまうほど、冬の間中そうして飽きも
せず睦み合い、抱きあっていた――。



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