パッチワーク 25
(25)
夜ヒカルが帰ってきたので部屋に挨拶しにいった。ヒカルの部屋にはいるのは秋の塔矢君との対局の前の日以来
だった。あの時はヒカルが途中で居眠りしそうになって怒ったら「塔矢との対局が楽しみでわくわくして一週間
ぐらい上手く寝付けなかったのにおまえと打ってたらなんか気持ちが落ち着いてきて眠くなったんだ。俺昼寝す
るから子どものときみたいに手を握ってて」と言われて子どもの頃のいつも二人でいたときに戻ったみたいで嬉
しかった。四月のときのことがあって。あれは私にとっては恋愛感情と関係ない好奇心の延長線上であまり気持
ちのいいものじゃなかった。ただ、高校に入って古文の授業のとき先生の雑談を聞いて自分が三途の川を渡ると
きはヒカルが背負ってくれるのかなと思ってそれはそれで嬉しかった。ヒカルは前と同じように好きだけれどヒ
カルとまたあれをしたいかというとそんなことはなかった。でも、もう子どものときのようにはヒカルと話すこ
とはできないんじゃないかと思っているあいだにヒカルが対局を休みはじめあのことのせいかと思ったけれどヒ
カルの態度を見てそうじゃないのはわかった。そしてヒカルがあの時みたいにやせていって心配していたらまた
対局に戻ってその間自分は何も関わりがなかったからヒカルとの距離を感じていた。だから余計に秋の時は子ど
もの頃に戻ったみたいで嬉しかった。
パッチワーク 2003 夏 あかり(高一) 了
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