指話 26


(26)
―オレが恐いのか…?まだ…
―…違う…。
―酷い事をした…。
―そうじゃない…、嬉しくて…
―嬉しい…?
彼の胸に額を押し当てる。
―やっとあなたのものになれたから…
彼はボクの髪に口付ける。
―それは違う…。オレが、君のものになったんだ。アキラ君…。
彼の指がボクの髪を梳き、背中を伝い、腕を伝ってボクの指先に絡まる。
絡み合い、硬く握り締め合う。同様に唇を重ね合わす。
今日あった出来事を封じ込めるように彼の指にももう一度口付ける。
この指先がボクに与えるものは何一つ拒まない。拒めない。
痛みであっても、苦しみであっても。

その後、彼はまた一つ、新たなタイトルを手にした。
いつか、彼が手に入れたものを賭けて彼と向き合う時が来る。
彼の指先と向き合うだろう。タイトルを巡り、進藤を、saiを、そして父を巡り、
盤上で、それ以外の場所で。あの人の指先に繋がるものを、
あの人の指先が生み出すものを全て、ボクは見つめ、そして受け止める―。

                                   〈了〉



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