クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 26
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日中は夜よりは力が弱るらしいとは云え、クチナハは明が外に出ようとしたり
助けを求めようとしたりするたびに身内から明を責め、動きが取れなくさせる。
今また内部でうねるような運動が始まったのを感じ、明は身震いをした。
――だが、今までに比べるとこの動きは・・・?
体の芯からどうしようもなく甘い疼きが広がっていくのを覚えながらも、
訝しい思いが頭をかすめる。
妖し如きに責められて快楽を感じてしまう浅ましい己の姿など光の目から隠して
しまいたいと思うのに、置いていかれるのが怖くて、知らず知らずの内に明は
光の狩衣を握る手にぎゅっと力を込めていた。
そんな明の様子を見て、光は決意したように云った。
「よし、オレひとっ走り行って乗り物調達してくる!賀茂、そんなんじゃ
歩くの無理だろ。ホントは、外に出るのも辛いかも知れないけど・・・
車ん中でオレがずっと抱いて、手ぇ握っててやるから!それで、いいよな?」
乱れた息の下から薄く目を開いて明は光を見た。
いつも底抜けに明るい光が、ひどく真剣な男の顔をして己を見守っている。
そのことが可笑しくて、嬉しくて、泣き出したいような気持ちになった。
それと同時に、己のために奔走してくれる光の足手まといには決してなるまいと思った。
光の衣を握り締めていた手をそっと離して明は云った。
「気を遣わせてすまない、近衛。・・・でも、ボクはやっぱりここに残ることにするよ」
「なんで?遠慮してんのか?」
「いや・・・それもあるけど、いつもに比べると今日はどうも・・・動き、が大人しい
ような気がするんだ。これくらいなら一人で待っていられると、思う」
今までならこういう状況では、クチナハが分泌する疼きを生む淫液に
内部をジクジクと灼かれ、その上で更にクチナハに激しく動かれて、
明はなす術もなくのたうち悶えるより他に手がなかった。
それがどういうわけか、今日に限ってクチナハの動きが妙に緩慢だ。
奥の一点を突く動きも今までのような荒々しい勢いがないし、分泌される淫液も
普段より量が少ない気がする。
――弱っている、ような印象を明は後門で感じ取った。
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