誘惑 第三部 26
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皮膚の表面は少し冷たくて、触れた瞬間にはヒヤッとするけれど、ずっと触れ合っていると、
その下の体温が感じられて、暖かいを通り越して熱いくらいだ。その熱が伝わって、こっちま
で熱くなってくる気がする。
だがその熱に別のものが混ざり始めて、ヒカルが戸惑いがちに、小声でアキラを咎める。
「ちょ、ちょっと、塔矢…」
「なに?」
「オレ、眠いんだけど…」
「そう?」
「やめろよ…おまえ…」
「いやだね。」
「もう寝るんじゃなかったのか?」
「誰がそんな事言った?」
「や…めろって…塔矢…!」
「やだ。やめない。」
「おまえ、いい加減にしろよ、動けないとか言ってたくせに、ウソだったのかよ?」
「ホントだよ。ボクん中で元気なのはここだけ。」
思わず身を起こしかけたヒカルをアキラはそのまま抱き寄せる。
「だって今日はまだキミの中に入ってない。まだキミを感じたりないんだ。」
「やっ…めろ、ってばぁ…」
そう言いながらも、ヒカルの中をかき回すアキラの指に、ヒカルは自分自身も熱くなってきて
いるのを感じていた。
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