弄ばれたい御衣黄桜下の翻弄覗き夜話 26


(26)
門脇は、下肢を精液にまみれさせたまま俯せに横たわるヒカルを見下ろしていた。
二時間前には考えもしなかった光景だった。
ほんの少し前まで、共に碁を打ち、年の差はあれ、同じ道を志すものとしてライバル
とも思っていた少年が、今は完全に自分に征服されて、そこに体を投げ出していた。
のぞきこむと、頬に幾筋もの涙の通り道が出来ていた。
目は開いていたが、そこには何も映していない。
心配になった門脇がその呼吸を確認して、ついでに目の前で手を振って見たが、何の
反応もない。
快楽に意識をどこかに飛ばしてしまって、完全に放心状態なのだ。
その様は、羽根をむしられた蝶にも似て、夜の闇の中で艶めいた空気を纏っていた。
「おい、進藤」
小さく声をかけると意外にも、ヒカルは素直に門脇の方を向いた。
なのに、目は相変わらず焦点の定まらないままだ。
門脇は気付いた。
性交の激しさに自我を手放してしまったヒカルは、一種の催眠状態におちいって
しまっているのだ。
今なら、門脇のどんな質問にも、拒否することなく答えるのではないだろうか。
まさに願っていた状態だった。
「おい……」
そっと、ヒカルの目に顔を近づけてつぶやく。
「おまえ、誰に抱かれてたんだよ」



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