初めての体験+Aside 26
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ヒカルは「あっ」と、呟いて黙ってしまった。自分も食べるということをすっかり忘れて
いたらしい。
「………中辛にしとく…」
社のヒカルへの恋心は、一気に上昇した。
アキラの家に戻ってから、社はヒカルのご指名でありがたくも助手を仰せつかった。
ヒカルの危なっかしい包丁さばきに、ハラハラしながらも、並んで野菜の皮をむく。
「うぅ〜目が痛ぇよ。」
タマネギを刻んでいたヒカルが、涙をポロポロこぼしながら目をこすった。
「進藤、こすったらアカン。オレがヤルから…」
「…うん…ゴメン…」
軽快にタマネギを刻む社の手元をヒカルが覗き込んだ。
「社、うまいなぁ…」
と、感心する。社は顔を赤らめた。実はこういうことは嫌いではない。簡単な料理なら
自分で作れる。でも、どうせなら、やっぱりヒカルに作って欲しい。ヒカルの作った
カレーが食べたいのだ。それに、ヒカルではなく社が作ったと知ったら、アキラが激怒
するのではないだろうか?それも表情には決して現さずに…。
「オレ、ジャガイモむくね。」
社だけにやらせて悪いと思ったのか、ヒカルがジャガイモに手を伸ばした。辿々しい手つきで
ジャガイモの皮を剥いていく。そうだ。たとえ、ジャガイモを剥いた皮が分厚すぎようと、
ニンジンが生煮えだろうと、ヒカルの作ったものならそれだけで価値がある。
そして、カレーは完成した。
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