Shangri-La第2章 26 - 28


(26)
(そうか、そっちか………!)
緒方はぎゅっとアキラを握り締め、アキラは短く悲鳴を上げ
そのまま少し手を動かすと、叫びとも喘ぎともつかない声を
上げながら、緒方の手の中に精を放った。
吐き出されたそれは片手には余る程の量で、
指の隙間から次々と零れ落としながら、
緒方は何とかティッシュを手繰り寄せて拭った。
本当は飲み干すつもりでいたが、溜めたままの手を鼻先に持ってくると
随分溜まっていたのだろう、すえた濃い匂いがして
口にする気にはなれなかった。
アキラは自分で処理していないのだろうか?と下世話な心配が
一瞬、緒方の脳裏をよぎった。

アキラは弛緩して、緒方が腰に廻した手だけがアキラを支えていた。
ゆっくりと緒方が動くと、しばらくは大人しくしていたアキラは
喘ぎ始め、少しずつ嬌声が漏れ、だんだん大きくなった。
窘めようとアキラを呼ぶと、アキラは何度も緒方を呼んだ。
結局アキラは嬌声を抑えようとはせず、
途切れず呼ばれることに悪い気もしなかった緒方は
そのままアキラに呼ばれ続けていたが
それと同時に、他人のものになってしまったアキラを感じた。


(27)
遅い来る強烈な熱と、鈍く、しかし確実に存在する痛みと
その痛みが増幅されて弾けた、白い爆発の後のことは
アキラにとっては現実感がなくて、夢の中のようだった。
緒方はアキラの名を呼んでくれ、アキラが呼んだら返す言葉があり、
アキラが望めばそれに従った。

求めれば応じる、確かなぬくもり。甘い囁き。
「此処に在る事」のしあわせ―――
アキラは夢に見た幸せを、やっと感じていた。


「おがたさん、だいすき……」
脳裏に浮かんだその言葉は、声にはならずに零れ落ちた。


(28)
「おっかしいなー。やっぱ嫌われたかなー?」
深夜のアルバイトの休憩時間。
ヒカルは口をとがらせ、携帯を握りしめていた。
アキラから最後に電話が来たのは、1週間以上も前のことだ。
半端でない疲労から、アキラの声を聞きながら眠ってしまった。
既に2度、やってしまって、二度とも電話でイヤというほど叱られた。
流石に三度目はマズイだろうと思って、気を付けてはいたのに
アキラの声は低く優しくて、やっぱり眠りに誘われてしまった。
一旦電話を切ったアキラからかかって来た、その着信音で目が覚め
前のように怒鳴られるかと思って恐る恐る受けたら
アキラは、疲れているのに長々とごめん、と謝って、
もうこちらからは電話しないから、風邪を引かないよう
早く着替えてベッドで寝るようにと言うと
おやすみ、と電話を切ってしまった。
拍子抜けしたものの、本当に疲れていたヒカルはそのまま眠った。



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