少年王アキラ 26 - 30


(26)
少年王アキラは素肌の上からただマントを羽織っただけの姿だったが、そのようなことに
羞恥する少年ではなかった。
箱庭の中であまりに大切にそして奔放に育てられたからであり、また、彼の裸体はイパーン人
から見て、とても直視できるものではなかった。
内側から光り輝いているのではないかと思わせるシルクの肌に、瞳と髪の色は漆黒のそれで、
唇は朝露に濡れたバラの花びらを彷彿とさせた。
胸を飾る2つの飾りは、誰かに弄られ、吸われまくったときのような鮮やかな桃色をしている。
人がもっとも嫌悪するところですら、王のそれはパールピンクに輝いているといわれていた。
……最後の一つだけは、誰も確認することは適わなかったが、とにかく、少年王の全てが直視
するのも躊躇われるほど美しいものだったのだ。
つまりは、少年王が恥ずかしさを感じる必要は今まで皆無だったのである。

「さあ! 皆行くずぉ!」
アキラ王は靴音を高く鳴らし、ハマグリゴイシへ向かって颯爽と歩き出した。
その吸われまくったような色をした小さな飾りが、外気にさらされツンと立ち上がっている。
青いマントがひらりひらりと空気を孕むたび、その突起がチラチラと目に映り、可憐な執事
座間は思わず腰を引いた。執事はまだ背を嬲られたときの快感が身体のあちらこちらに燻って
おり、少しの刺激でエレクトしてしまいそうな危険性を孕んでいた。


(27)
「お待ちください、王よ!」
裸エプロンならぬ裸マント姿でハマグリゴイシに跨ろうと豪快に脚をおっぴろげたアキラ王を
慌ててオガタンが呼び止めた。
「その面妖なお姿のまま、金沢の地を踏むおつもりで?」
「当然であろう。なにが悪いのだ?」
「残念ながら金沢はアキラ王の統治する領土ではありません。未だ日本なる国に属しております。
そのお姿のままでは日本国の刑法『公然猥褻罪』に抵触する恐れが……」
「『コーゼンワイセツザイ』とな……?」
正確な意味を伝えてもアキラ王には理解できないことを知っているオガタンは、若干ニュアンスを
変えて説明してみる。
「そのような神々しいお姿のまま金沢の街を疾走してごらんなさい。飢えた当地の民をことごとく
悩殺してしまいますぞ。おまけに王のおっ起った桃色ビーチクを狼藉者がまかり間違ってプッチン
した日には、王の嬌声のあまりの衝撃に競馬場の牡馬共のバズーカ砲が炸裂し、街は一瞬にして焦土と
化してしまうことでしょう。金沢の街を壊滅させてはなりません」
ストリーキングアキラ王──それは世界を破滅へと導く底知れぬ力を秘めた愛と官能の人間最終兵器なのである。
アキラ王は首を傾げて「おっ起った桃色ビーチク……?プッチン……?」などと呟いていたが、ふと我に返り叫んだ。
「金沢の街を壊滅させては競馬の開催も中止になってしまうではないか!?父上のために金沢銘菓『中田屋』の
きんつばも買って帰りたいというのに、それも叶わぬのか?」
「左様。ですから、衣装をお召しになってください」
「……わかった。まず、おパンツを持て」
オガタンが恭しく差し出す純白おパンツに、アキラ王はエレガントに股をおっぴろげて両足を入れた。

その光景を執事座間はうっとりと眺めていた。
「私がスズランの香りのニュービーズで丹誠込めて洗った純白おパンツのなんと美しいことか!
今度はオガタンの黄金のヒモヒモおパンツも洗って差し上げよう」
黄金のヒモヒモおパンツでオガタンに緊縛される自分を想像し、座間は思わず前屈みになり身悶える。
しかしながら、仁王立ちのアキラ王がヘソまで隠れる純白おパンツのゴム紐を愉快そうに「パ〜ンッ!」
と勢いよく弾くと、その情熱的な音にハッと我に返り、内股の贅肉を可憐に震わせてしまうのだった。


(28)
オガタンは黙々とアキラ王へ服を着せていく。つい先刻には胸躍らせて脱がせた服を、
目的も果たせずに再び身につけさせる行為は虚しい……。
「どうした、オガタン!なにをぐずぐずしている?」
自然と手が鈍るオガタンに、短気なアキラ王は足を踏み鳴らし眉を顰めて抗議する。
「不肖、この私めがお手伝い致します」
今まで頬を紅潮させ内股立ちで身悶えていた座間だったが、己が役目に目覚めて進み出た。
―余計なことを!
反射的に睨んだオガタンだったが、冷たい一瞥を受け頬を染める可憐な執事を
見てげんなりとして視線を逸らす。
―…あんなヤツに貴重な薬を使わなくてすんだだけマシだったな。
大人なオガタンは自分にそう言い聞かせ、誤魔化すことにしたようだ。
ようやく身支度が整うと、アキラ王はハマグリゴイシに歩み寄り、
その背にヒラリと跨った。
右手に持った鞭で前方を指し示し、
「よぉし、今度こそ行くぞぉ!」


(29)
船は金沢競馬場の駐車場に停泊中だ。アキラ王一行が降り立つと周囲で待ちかまえて
いた群衆が殺到する。少年王であり、万馬券ハンターでもあるアキラ王には熱狂的な
ファンが多いのだ。SPに守られつつ前進するアキラ王。が、1人の男がSPの手を
かいくぐりアキラ王の白いタイツに包まれたすらりと伸びたおみ足に触れようとした。
「無礼者!」
その瞬間、王の鞭が美しい弧を描いた。ビシリという音と共に自分の手を押さえる男。
しかし、その表情はやけに嬉しそうだ。
「や〜、アキラ王に鞭打たれちゃったよ!」
「…なんだよ、また広瀬さんかよぉ」
「今日こそ俺が…って狙ってたのになぁ!」
周りからその男へと羨望の声が上がる。異様な盛り上がりをみせる集団に、アキラ王は
戸惑ったような視線を投げかける。
「オガタン、この者達はなにを騒いでいるのだ?」
「…我が王の華麗なる鞭捌きの恩恵を授かり感激しているのです」
巷でまことしやかに囁かれている『競馬場に到着後の王に最初に鞭打たれた者は万馬券に
ありつける』という都市伝説を、アキラ王は知らない…。
そんな一行の前に少年帝國大使館金沢支部駐在・イチリュー大使が走り寄る。
(少年帝國大使館は全国の競馬場設置都市には、必ず支部を設けているのだ)
「お待ちしておりました。ささ、こちらへ…」
一行はイチリューの先導で一般には公表されていない、ワンフロアぶち抜きの王室専用
観覧室―ロイヤルルームへと案内された。


(30)
「少年王が金沢に現れたぞ!」
日本棋院本部司令室にサイレンが響きわたった。好手戦隊総司令官シノーダは、
緊張した面もちで隊員達に召集をかけた。…が、隊員達は一向に司令室に集合しない。
「何をやっているんだ!イライラ」
「無駄です。シノーダ司令官。」
「む…!何故だ?イゴピンク。」
ただ一人召集に応じた奈瀬はシノーダの問いに答えた。
「あの馬鹿どもは、今、内戦の真っ最中です。」
「…また…レッドか…」
ピンクとシノーダは、同時に重い溜息をついた。


豪華なVIPルーム―
少年王アキラは、競馬新聞を真剣な表情で読んでいた。
そのあまりに真剣な眼差しに、座間は見とれてしまい、手に持っていた筆入れを
床に落としてしまった。毛足の長い絨毯の上に落ちたので、派手な音こそは
立てなかったが、
それでも、アキラ王の不興を買うのには十分であった。
アキラ王の目が鋭く光った。
慌てて散らばった赤鉛筆を拾う座間に向かって、新聞が叩き付けられた。
「ボクが予想をしているときは、物音を立てるなといつも言っているだろう!
 お前は何年ボクに使えているのだ!
 ボクが万馬券をとれなかったら…レッドに紅白の碁石をプレゼント出来なかったら…
 お前は…どうなるか……わかっているな…?」
座間はその言葉を聞いて、『どうか、外してください。神様(;´Д`)ハァハァ』
と真剣に天に祈った。



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