Tonight 26 - 30


(26)
「んっ!」
小さな声を上げて塔矢の身体が跳ねる。
退きかけてたオレはもう一度そこを狙うようにしてぐっと腰を押し込むと、塔矢がぎゅっと目をつぶって
唇を噛んだ。
我慢しないで。そう言いたくてオレは動きを止めて塔矢の顔に手を伸ばし、きつく噛み締められた唇を
そっと撫でる。
すると塔矢はぴくっと震えて、それからゆっくり目を開いた。
真っ直ぐにオレを見あげた潤んだ瞳にどくん、とオレの心臓と下半身が反応する。と、ますます塔矢
の目が大きく見開かれる。そのまま塔矢を見詰めたまま、オレはゆっくりと動き出す。
「あ……」
塔矢がもらした小さな声を聞いたら、もう、我慢なんか出来なくなった。
少し引き抜いて突き入れると、その衝撃で息が漏れる。
「ああっ…!」
首を振り、涙をこぼし、こらえきれずに声が上がる。
その表情に、仕草に、その声に、煽り立てられる。
もう、何も考えられなくなって、ただ、本能だけでオレは動く。
塔矢。
塔矢、塔矢、塔矢……
オレの頭の中には、もうその名前しかなくなって、思いのたけをぶつけるようにオレ自身をあいつの中
に突き入れる。
「あ、ああーッ…!」
高い悲鳴を上げて塔矢の身体が痙攣し、オレと塔矢の間に熱い欲望を撒き散らす。同時にオレも塔矢
の中にオレの熱を注ぎ込む。オレを締め付け、搾り取るように熱く激しく収縮している塔矢の中で、オレ
はオレの全てを与え、塔矢の全てを感じていた。


(27)
ようやく熱が引き、呼吸も収まりつつある身体を起こし、そっと塔矢から抜け出る。
眠っている、というよりは意識を失っている塔矢の顔をじっと見下ろしていたら、何だか鼻の奥がツン、
と痛くなってきて、じわっと視界が滲んだ。

塔矢。
あんなに強くて、誰よりも厳しくて真っ直ぐな強さを持った塔矢が、オレの全部を受け入れてくれたと
言うことが、嬉しいとかそんな言葉じゃ言い表せなくて、なんて言ったらいいかわかんないけど、ただ、
塔矢の顔を見ていた。

汗で湿って顔に張り付いてる髪をそっとはらって、普段はぱっつり切りそろえられた前髪に隠されてる
白いキレイな額に、そっとキスした。

どうして?塔矢。
どうして、そんなにも無条件に、オレを受け入れてくれたんだ?

そうして、やっぱりオレは塔矢には敵わないと思う。
オレはこんなに強くない。
こんなに優しくない。


(28)
ほんの僅かに眉を寄せて、浅い呼吸を繰り返している塔矢。
なんてキレイなんだろう。
塔矢がこんなにキレイだなんて、知らなかった。
無理矢理快感を与えられて泣きそうな顔も、苦痛をこらえてる顔も、
我を失った顔も、そして、こうして全てを投げ出したようにぐったりと目を閉じている顔も、
全部全部キレイだと思った。
塔矢がこんなに強くて、激しくて、そして優しくて、綺麗な人間だということを、今更のように思い知らされ
たような気がした。

ずるずると布団から這い出て部屋の隅にあったティッシュの箱を持ってきて、オレと、塔矢の吐き出した
ものを拭う。ホントはシャワーとか浴びた方がいいんだろうけど、でももうそんな気力もなくて、塔矢の
身体をなんとかキレイにして、ぐしゃぐしゃになったオレの布団から、キレイなままの塔矢の布団の方
へ塔矢の身体を引き摺り移した。さすがにその時は塔矢は一瞬ぼうっと目を見開いたけど、オレを見て
綺麗に柔らかく笑みを浮かべて、また、目を閉じた。
その塔矢の、白い滑らかな頬にそっとキスをして、塔矢の隣に寄り添って、掛け布団を引き寄せた。


(29)
いつの間に眠ってしまったんだろう。
次に目を開けたときには部屋の中は明るくなってきていた。
目を開けるよりも前に、オレは隣で眠ってる奴の気配を感じてた。
手を伸ばしたらサラサラの髪に触って、本当に昨夜のことは夢じゃなかったんだって、体中がふわっと
あったかくなった。
眠っている塔矢を起こさないように、顔だけ動かして塔矢を見る。
静かに眠ってる塔矢の寝顔は障子越しに朝の光を受けて本当に綺麗だった。
塔矢の長い睫毛の落とす陰を見てたら、オレはまた泣きそうになってしまった。

きっと。
オレは塔矢が好きなんだ。
だからあんなふうにしたかった。
塔矢の全部が欲しかった。
塔矢の全部を感じたかった。
もしかしたら塔矢はオレみたいな気持ちは持ってないのかもしれないけど、
けど、昨日の晩は同じようにオレを求めてくれた。
塔矢の腕はオレと同じ強さでオレの身体を抱きしめていた。
そしてオレの全部を受け入れてくれた。
それだけで、いい。


(30)
本当はこうしてずっと塔矢の顔を見ていたいけど、じきに塔矢は目を覚ますだろう。
そうして、何事もなかったみたいに、あの涼やかな声で「おはよう」と言い、「今何時だ?」と目覚まし時計
を確認し、それからするっと布団を抜け出て平気な顔をして服を着るんだろう。
塔矢の匂いと体温が残った布団から出て行きたくなくて、オレがいつまでもぐずぐずしてると、呆れた顔
で見下ろして、
「今日は洪秀英との対局だろう?早く起きて支度しないと遅刻するぞ。」
なんて、そんな風に冷たく言うんだろう。
昨夜の熱い塔矢なんて、潤んだ目も、飛び散る汗も、あの熱さも激しさも、オレに絡みついた手足も紅く
染まった目元も、悩ましいくらいの声も、まるでオレの夢だったみたいに、いつもどおりに冷たいくらいの
厳しい顔でオレを見るんだろう。

でも、今だけは、夢の続きを見ていたいから。

好きだ、塔矢。

そんな気持ちを込めて、塔矢を起こさないようにそっと、塔矢のキレイな唇にキスをした。


Tonight End.



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