裏階段 アキラ編 26 - 30
(26)
ホテルのバスローブを羽織ってバスルームから出てみると、ベッドの上にアキラの姿が見当たらない。
部屋の中へ進み出ると、ドアの影にいたアキラが背後から抱き着いてきた。
アキラもバスローブを着ていた。
そのアキラの方に向き直り、肩を抱いて唇を重ねてやる。そのままベッドに押し倒し、
両手首を押さえ込んで激しく彼の唇を吸い、舌を差し入れて口内を探り彼の舌を強く舐めとってやる。
もう二度とオレに抱かれたいと思わぬように容赦のない行為を繰り返した事があった。
その予告のキスだ。
それを感じ取ったのか、微かにアキラの体が震えていた。
それでもこちらの舌の動きに合わせて自ら舌を絡めてくる。
どんな仕打ちを与えても彼はオレから離れようとしなかった。離れてくれなかった。
何度でも、夜を一緒に過ごす事を望んだ。
唇を離してアキラの顔を見つめた。挑発するような笑みは消えて、ただ必死に何かを訴えるように
アキラもこちらを見つめ返してきていた。
「…何が言いたいんだ?」
手首を離してアキラの顎を持ち上げると、アキラの唇が言葉を綴ろうと動きかけた。
だがそれを押しとどめるように唇を結び、目を閉じて首を横に振る。
彼が考えている事が読み取れず、無性に苛立った。
荒々しくバスローブを剥ぎ取ってうつ伏せにした。
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チャイムが鳴ってドアを開けた時、ランドセルを背負ったままのアキラの姿を見た時は
少なからず動揺した。
同時期に行われたある企業が主催のリーグ戦を制して後援会からちょっとした祝賀会を
催してもらい、酒宴あけのまだほろ酔い気分が抜けきらない状態だった。
「緒方さん、おめでとうございます。…ボク、直接観に行きたかった。」
対局会場は西日本方面の各地であった。決勝戦は瀬戸内海のあるホテルで行われた。
「すべての対局を観に行っていたらきりがないよ。」
アキラはオレンジやキウイの詰まった紙袋を抱えていた。彼なりに選んだお祝の品だった。
お礼を言ってそれを受け取り、玄関で佇むアキラに、それ以上どう答えたらいいか迷った。
その時オレの部屋には来客がいたからだ。
アキラの足下に白いハイヒールがそろえて置かている。
だがアキラの視線がそのハイヒールではなく、自分の背後の方に注がれ停まっている事に
気がつき、ハッとなって振り向いた。
「いらっしゃい、坊や。セイジさん、上がってもらいなさいよ。」
素肌に薄手の毛布を巻き付けた格好で彼女は立っていた。
面白半分に幼いアキラの戦意を掻き立てるように、彼女はアキラににっこり微笑みかけると
部屋の奥へ戻っていった。
「…お邪魔しました。」
ぺこりとアキラは頭を下げるとドアを開けて出て行った。
呼び止めることは出来なかった。
彼女を睨み付けて立っていたアキラのその時の表情は今でも忘れられない。
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「…大人気ない事をするもんじゃない。」
アキラが帰っていったあと、ベッドルームに居座る彼女を窘めた。
「あのコ、まるでお乳をもらっている途中で母親から引き離された仔猫みたいな目してたわ。
よほどあなたの事がお気に入りなのね。」
「いい加減にしないか。」
「それともあなたの方があのコを気に入っているのかしら。綺麗な顔の男の子だものね。
あと数年もしたら…」
「…やめろ。」
「数年もしたら立派なsexの対象になりえるわ。」
ベッドサイドにあった水差しを払い除けて床に叩き付けた。
「…帰ってくれ。」
「冗談よ。ばっかみたい。」
手早く化粧と身支度を済ませると彼女は部屋から出て行った。それ以降彼女や、
彼女以外にも女性を部屋入れる事はしなくなった。
彼女が本能的に何をアキラから嗅ぎ取ったのかはわからない。それはアキラもそうだった。
男女の関係の生臭さを目の当たりにして嫌悪感を抱いたのか、それからしばらくアキラは
オレから離れるようになった。それはそれで仕方ないと思った。
あれだけ望んでいた距離感がこれで持てるじゃないか、と自分に言い聞かせた。
あまり格好の良いかたちではないが、仕方ない。
そう思って過ごしていたある日、再びアキラはオレのマンションにやって来た。
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うつ伏せたアキラの背中から腰にかけてのなだらかなラインが、淡いルームライトに
照らされて浮き上がる。
とても同性のものとは思えないその形の綺麗な双丘を両手で掴み、強く揉みしだく。
左右に大きく割り開き、中央の窄まりに舌を突き入れる。
「あっ…」
反射的にアキラは両足をきつく閉じようとしたが、それを強引に開かせ、
唇にしたものと同じ行為をそこに施す。
「あっ、…んっ…!」
アキラがベッドの上を這ってこちらの体の下から逃れようとするのを押さえ込み、
なお舌で彼の体内を深く抉り、摩る。充分唾液を馴染ませ、そこから唇を離してすぐに指を押し入れる。
「んんっ…!」
右腕でアキラの腰を押さえ込み、左手の人さし指と中指でアキラの内側を探る。
「や…」
思わず漏れそうになった拒絶の言葉を飲み込むとそれきりアキラは静かになった。
乱暴に指を引き抜き、覆いかぶさるようにして腰を重ねると、アキラがシーツをギュと握りしめた。
「力を抜きなさい。」
窄まりに指を添えて少しずつ力を加える。
その部分が色付き、丸く押し広がってこちらの先端をゆっくりと飲み込むのが見える。
「ううー…ん…、」
アキラがくぐもった唸り声をあげる。何度繰り返しても最初のこの瞬間の辛さからだけは、
逃れられないようであった。
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その苦しみから早く解放してやるためにもある程度進めたら一気に貫く。
「うあっ…!」
背を仰け反らせてもがく彼の体を押さえ込み、一度ねじ込んだものをゆっくり後退させる。
そうしながら彼の腰を抱え上げて四つん這いの格好にさせて、再度力任せに押し込む。
「ああーっ…」
アキラの前肢が崩れてシーツの上に突っ伏す。
腰だけを高く突き上させた格好のままで数回大きな抽出を繰り返す。
既にアキラの全身に脂汗が浮き上がってきている。泣き声の混じった小さなうめき声を漏らし、
ぐしゃぐしゃになる程シーツを両手で握りしめながらも、従順にこちらの行為に従っている。
オレとのsexがそういうものであると、彼にはそう教え込んである。
パソコンの使い方を習いたい、と玄関口でアキラはオレに話した。
高学年になれば学校で習うようだが、棋譜の整理やネットで囲碁をする者が増えて来ているという話を
オレと芦原が先生に話すのを耳にしていたのだろう。
残念ながら先生はその時はあまり興味を示さなかったのだが。
突然の訪問に戸惑いながらもその時は部屋に誰も居なかったので、とりあえずアキラを
中に入れた。
「お邪魔します。」
大勢の人間が毎日のように家に出入りする事に慣れているアキラにとって、人の家を訪問する事に
そんなに躊躇がないのかもしれないと思った。
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