痴漢電車 お持ち帰り編 26 - 30


(26)
 意地悪……………なんて心地よい響きだ。ヒカルが言うと本当に可愛くて可愛くて、もっと
意地悪をしたくなってしまう。
 シクシクと泣くヒカルの身体をギュッと強く抱きしめ、腰を下から突き上げた。
「ひぃん!」
ヒカルの足がジタバタと宙を蹴る。その足を太腿の下からすくい上げるように持ち上げる。
そうすると、身体が自然とアキラに預けられ、ますます深く繋がった。
 「イヤ…いやぁ…」
泣き声が部屋中に響き渡る。アキラがヒカルの身体を少し持ち上げて落とすと、その声は
より大きくなった。
 彼が身体を震わせて泣くたびに、自分を心地よく締め付ける。
やっぱり、ボクって意地悪なんだな―――――――ヒカルが泣いているのを見て、可愛いと
思うなんて…もっと虐めたいと思うなんて…ゾクゾクとした快感が全身を駆けめぐる。

 「も…やだ…やだぁ…!」
激しく首を振りながら、ヒカルが泣き叫ぶ。それが合図になった。アキラは大きくヒカルを
持ち上げ急に落とした。同時に下から突き上げる。
 「ァアアァ―」
ヒカルが高い悲鳴を上げた。それともに勢いよく白い液体が飛び散った。


(27)
 その後も、アキラはぐったりとしたヒカルを抱いた。
「もうやめて…ゆるして…」
懇願されても、それはアキラの欲望を煽るだけで、何の助けにもならなかった。ヒカルには
それがわからないのかずぅっと「ゆるして…」と泣き続けた。


 目が覚めるともう昼近かった。腕の中のヒカルはまだ眠っている。ぐったりとして、顔色が
悪いので心配になったが、寝息は安らかでホッとした。寒いのかアキラの胸に顔をすり寄せて、
少しでも温もりを求めようとする。
 本当になんて可愛いんだろう。コレでヒカルは自分の恋人だ。アキラは飽きずに、ヒカルを
見つめた。 

 やがてヒカルが夢の世界から現実へと戻ってきた。瞼を開けるとすぐにアキラと視線が
ぶつかった。ヒカルは状況が理解できていないのか、ポカンと口を開けている。
「おはよう…」
アキラが額にキスをして微笑むと、ヒカルは顔を真っ赤にして、背中を向けてしまった。
 「お腹空いただろ?食事にしようか?」
ヒカルは背中を向けたままコクンと小さく頷いた。

 二人で遅すぎる朝食を食べる。
『何か、新婚みたいだな…』
にやけながら、コーヒーを口に運んで、ヒカルの方をそれとなく見遣った。
 ヒカルはきつね色に焼けたトーストを囓っていた。俯いたまま一言もしゃべらず、ひたすら
パンを囓り続ける。彼はアキラの方を決して見ようとしなかった。
 怒っているのかと思ったが、そうではないらしい。俯き加減の表情は確認しにくいが、耳が
真っ赤に染まっていた。照れているのだ。
 突然、ヒカルへの愛しさがあふれ出し、自分でもどうしようも無くなった。


(28)
 トーストを持つヒカルの手を掴み、自分の方へと引き倒した。ヒカルは、驚いて声も出ない。
 キョトンとしているヒカルの上にのし掛かり、シャツの下に手を這わせた。
「!!や、やだ!!やめてよ!」
ヒカルがアキラを押しのけようと腕を突っぱねた。その手を捕まえ、両手をバンザイのように
磔にする。
 昨日、あんなにしたのに、まだ足りない。もっともっとヒカルが欲しい。アキラはわめく
ヒカルの唇をキスで塞いだ。暴れていたヒカルの身体から力が抜けた。
 シャツを脱がそうと押さえていた手を離す。と、その瞬間、ヒカルは思い切りアキラを突き飛ばした。
「バカ!ヘンタイ!スケベ!ピーマン!」
泣きながら、アキラを罵倒する。

……………バカ…ヘンタイ…スケベ…ここまではわかる。だが、最後の“ピーマン”は
いったいどういう意味だろうか………ヒカルに訊ねたい気がしたが、下手に刺激すると
余計にまずいことになりそうなのでとりあえず黙っていた。

 「オマエなんか…オマエなんかキライだ………バカヤロォ…」
ヒカルが泣きじゃくりながらアキラを詰った。
「もう…オレ…帰る…!」
アキラが止める間もなかった。仕方がないので、さっさと出て行こうとするヒカルの後ろを
オロオロと付いていく。
 ヒカルは玄関で靴を履いて、もう一度アキラを睨んだ。そして
「バカ!ヘンタイ!スケベ!カボチャ!オマエなんかキライだ―――――――――!」
と、叫んで走り去ってしまった。走り方がぎこちないのは昨晩の影響だろう。


 ヒカルは今度こそ本当に帰ってしまった。
「バカ…ヘンタイ…スケベ…最後カボチャになっていたな………」
アキラは走り去る華奢な後ろ姿が見えなくなっても、まだ、玄関に佇んでいた。


(29)
 「バカ!ヘンタイ!スケベ!ピーマン!」
何とかアキラから逃げることに成功した。腹立たしくて、悲しくて、何か一言言ってやらなければ
気が済まない。そして、出てきた悪口がコレだ………。
最後の“ピーマン”に意味など無い。ただ、他に思いつかなかっただけだ。

―――――塔矢はヒドイ……!オレの気持ち全然考えてくれない!
 アキラが自分を好きだと言ったから、その気持ちに答えようと思っていたのに………。
一生懸命がんばったのに……。
 突っ込むアキラはいいかもしれないが、それを受け入れるヒカルの方は大変なのだ。お尻は
痛いし、身体中軋んで怠いし、お腹の調子もよくないし…………。それなのに………。
 ヒカルは別にロマンチックな展開を期待していたわけではない。自分だって、どちらかといえば
花より団子の色気のないヤツだ。だけど、もう少し労って欲しかった。ヒカルの身体のことを
考えて欲しかったのだ。
 情けなくて涙が出てきた。
「オマエなんかキライだ………バカヤロォ…」
もうアキラの「好き」なんて信用しない。アイツは本当は、自分のことなど好きでも何でもないのだ。

 昨日から連続でカルチャーショックを受けて、ヒカルは疲れ切っていた。もうイヤだ。
帰りたい。イヤ、帰る。今度こそ何が何でも帰る。そう決めた。
 憤然としているヒカルの後ろをアキラが付いてくる。昨日と違って今日は止めもしない。
それがまた腹立たしいのだ。アキラが何を言っても帰るつもりだったけど………なんか悔しい。
 帰る前にもう一度文句を言ってやる。
「バカ!ヘンタイ!スケベ!カボチャ!オマエなんかキライだ―――――――――!」
あれ?オレさっきも“カボチャ”って言ったっけ?まあ、いいや………とにかくもう
アキラの顔なんか見たくもない。碁会所にももう行かない。もう絶交だ。
 ヒカルは走って塔矢邸を後にした。悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。


(30)
 翌日もその次の日もヒカルは碁会所に現れなかった。怒っているのかな……マズイなあ…。
それでもアキラはまだ、楽観していた。ヒカルに好かれているという自信があったのだ。
 だが、ヒカルに貸した服が綺麗にプレスされて、宅配便で送り返されてきたとき、流石に
ヤバイと感じた。こんなモノわざわざ送ってくる必要はない。碁会所で会って渡せばすむことだ。
「コレは進藤からの絶縁状………かな…?」
相当、怒っている。早いうちに手を打たないと、取り返しがつかない。

 ケーキを手みやげにヒカルの家を訪ねた。ヒカルはまだ帰っていないと、申し訳なさそうに
彼の母親が告げた。
 出直そうかと思ったが、ヒカルの母が彼の部屋にあげてくれた。
「ごめんなさいね。もう少ししたら戻ると思うから…」
案内されたヒカルの部屋は、彼らしい賑やかな部屋だった。漫画と詰め碁集が並んで本棚に
立てられているのが微笑ましい。
 「このベッドで進藤が寝ているのか………」
モヤモヤといけない気分になってくる。手を伸ばして、シーツをゆっくり撫でていると、
ドアの向こうから階段を駆け上がる軽快な足音が聞こえてきた。
「ねえ!お母さぁん、お客さんって誰ぇ?」
足音に混じってヒカルが母親に尋ねる声が聞こえた。
 ああ…進藤!なんて可愛い声なんだ。 アキラはドアが開くのを今か今かと待ち焦がれていた。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!