痴漢電車 26 - 30
(26)
確かに痛いことは痛いのだが、それとは別に身体の奥からムズムズするような感覚が
湧き上がってくる。
「あぁ―」
勝手に恥ずかしい声が出てしまう。いつの間にか、アキラの胸にしがみつき、涙を流し続けていた。
「頭が変になっちゃうよぉ……」
「気持ちいいの?」
アキラの声が耳に落ちてきた。嬉しそうなその声に、ヒカルは初めて、もっと深くつながろうと
アキラに腰を押しつけていることに気が付いた。
―――――オレ…なんて格好…恥ずかしい……!
ヒカルは慌ててアキラから離れようとした。その時大きく電車が揺れた。
「あ、あああぁぁぁ―――――――――――」
大きく身体を仰け反らせた。中にいるアキラがヒカルの弱いところを刺激したのだ。
「ン……んん………うぅん………」
アキラが軽く抽挿をし始めた。それに電車の振動が加わり、ヒカルの身体を跳ねさせる。
「アァ……はぁん…」
鼻から抜けるような甘い声が耳をくすぐる。それが自分のものだと言うことを、アキラに
言われるまで気付いていなかった。
「進藤、進藤、可愛い声………もっと聞かせて…」
そんなことを言われて、出せるわけないじゃないか!ヒカルはキュッと唇を噛みしめた。
「意地っ張り………」
アキラは大きく腰を突き上げた。
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「あぁあん!」
あまりに甲高い声が出てしまい自分でも驚いた。ヒカルがいくら逃げようとしても、電車の
振動の力を借りて、アキラは思いもよらないところに刺激を与える。
ガタガタと車内が揺れる。時に大きく、時に小さく。ヒカルに覆い被さるアキラも揺れた。
「ん、んふぅ………アァン………ン……」
ヒカルの身体も、それに合わせて揺れていた。
時々、アキラの動きが止まる。耳の奥に甲高い耳障りなキイィィ―――ッという音が響く。
それが駅に停車する合図だと理解する頃には、アキラは再びヒカルを責め立てていた。
ヒカルの唇からは絶え間なく高い声が上がる。苦しげなそれでいて甘くて切ない悲鳴が。
「進藤、気持ちいいんだね…」
―――――ほら、またココがこんなになってる………
アキラの指がペニスに触れた。グチョグチョと響く水音が、ヒカルがもうかなり感じて
いることを示している。
「ボクも、もうイキそう………」
アキラがヒカルの身体を抱え直し、より深くつながった。
「あ、あぁ!イヤぁ――ッ」
そのまま、何度も引いては深く突き上げる。
電車が風を切る轟音の中、ヒカルの腰を穿つ高い音が耳を犯した。
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アキラはヒカルの尻を犯しながら、幼いペニスに指を絡ませた。今度は二人で一緒に
果てたいと思っていた。
アキラが腰を打つたびに、ヒカルのソレは切なく震え、先端から密を溢れさせた。
「ン…ンァァ…もう…ヤダ…」
ヒカルが激しく首を振る。涙が散った。
手の中のヒカルはもう爆発寸前だった。そして、ヒカルの中に納めている自分自身も……。
ヒカルが白いマグマを吹き上げる瞬間が見たい……………
だが、そうなれば、自分もヒカルもただではすまないだろう。後々のことを考えると、それは
諦めた方が良さそうだ。頭も身体も興奮の極致に達しているのに、どうして、こう現実的
なのだろうか。思考の一部が妙に冷静なのは、日常的な空間で非日常的な行為をしていることに
対する警戒心を抱いているのだろうか。
途中何度か、駅に止まったが、幸い、乗客は乗っては来なかった。いや、例え、乗ってきたとしても
アキラは行為を途中でやめたりはしなかっただろう。
『セーラー服姿の進藤を電車の中で抱いている………』
どう考えても日常生活からはかけ離れている。しかし、これが夢でも現実でもヒカルを手放す
つもりはなかった。
「ア、ア、ァ、もうイク………イッちゃうよぉ………」
ヒカルの声が一際高くなった。
アキラは自分自身に意識を集中させながらも、ヒカル自身をスカートで包み込み、
布ごと思い切り擦り上げた。
「ヒァァ………」
「く……ハァ……」
スカートにじんわりとシミが広がっていく。アキラが身体を引くと、ヒカルはコトリと
座席の上に倒れ込んだ。
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軽く頬をはたかれて、ヒカルは目を覚ました。
「進藤?大丈夫?終点だよ………」
起きあがろうとしたが、全身から力が抜けてしまっている。
アキラが、身体を支えて起こしてくれた。 体中あちこち痛む。ヒカルは顔を顰めた。
「痛い………」
ヒカルが気を失っている間に、アキラはどうやら身体を拭いてくれたらしい。下着もちゃんと
身につけていたし、その上ハンカチまであてがわれているようだった。
「まだ、残っているかもしれないから………」
そう言われた時、ヒカルの目から涙が零れた。大粒の涙をボロボロ零すヒカルに、アキラが
狼狽えた。
ヒカルは、電車に乗ってから自分の身の上に起きたことが、まだ信じられなかった。
女の子の格好をさせられて、女の子みたいにアキラに抱かれて……………情けない。
―――――みんなアイツらが悪いんだ………!
「…………キ……キライだ……オマエなんか……キライだ………」
「進藤………ゴメン…ゴメンね……」
「キライだ……オマエも……門脇さんも…みんな…大キライだ…………」
ヒカルはしゃくり上げながら、何度も「キライ」と繰り返した。
ヒカルは暫くシクシクと泣き続けていたが、手の甲で涙をゴシゴシと拭い、突然帰ると言い出した。
「………え?でも…その格好で?」
アキラの言葉にヒカルは改めて自分の姿を確かめた。
セーラー服の脇は胸まで裂けて、乳首が見えている。スカートもヒカルの出したもので
ドロドロだし、プリーツも何もない。本当に、見るも無惨な有様だ。
「どうしよう……これじゃ家にも、和谷のところにも帰れネエよ………」
ヒカルはまた泣いてしまった。
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泣きじゃくるヒカルにアキラが困ったように、話しかけてきた。
「ボクのところに来る?」
「…………ヤダ………」
にべもなく断るヒカルにアキラが苦笑する。
「大丈夫。もう、何もしないよ。第一、その格好じゃ帰れないだろ?」
誰のせいだと思っているのだ。そう言いたい。だけど…………
「塔矢先生とかに見られるのヤダ…………」
「お父さんとお母さんはまた、中国に行ってるよ。」
「…………誰もいないの?」
アキラは黙って頷いた。誰もいないなら、却って危険なような気がする。ヒカルの心は矛盾だらけだ。
迷っているヒカルに、ダメ押しとばかり言った。
「お腹空いてるだろ?家に頂き物のケーキもあるよ。」
ヒカルは少しカチンと来た。食べ物で釣れると思っているのか!?でも、ヒカルを心配そうに
見つめる瞳にドキンと胸が鳴った。
『どうしたんだよ………』
意識したらますますドキドキしてきた。
「来る?」
ヒカルは小さく頷いた。
別にケーキに釣られたワケじゃない。確かに、お腹は減っていたけれど………。ただ、
体中が痛くてだるいし、頭もフラフラだし、お風呂に入りたいし、この格好じゃ帰れないし…………
それだけだ。
アキラがジャケットを脱いで、ヒカルに掛けてくれた。ジャケットは自分には大きかったが、
スカートの汚れた部分がギリギリ隠れて、パッと見にはわからない。ヒカルはホッと息を
吐いた。
「じゃあ、行こうか。」
「どこに?このまま乗って帰るんじゃないの?」
電車は終点から折り返し運転になる。そのまま乗って、いれば元の駅に着くのだ。
「タクシーで帰ろう。」
「え?でも、オレ、お金持ってない………」
ヒカルが小さな声でそう言うと、アキラは笑って「ボクが持っている」と言った。
アキラが手を差し出す。ヒカルは、グズグズと鼻をすすりながら、その手を取った。
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