Shangri-La 27
(27)
身体は正直に反応してしまっているが、それはどうにでも理由がつく。
それより、ヒカルに警戒され拒絶されることをアキラは恐れた。
平静を装い、手は休めずヒカルを洗っていくが
もうヒカルの感触を楽しむ余裕はなかった。
欲望と恐怖とのせめぎ合いで身体がばらばらに引き裂かれそうで
その感覚と戦いながら、やっとヒカルから泡を流し落として
湯船に浸からせると、疲れと安堵が残った。
アキラは自分のことは手早く洗いながら呼吸を整え
ヒカルのいる湯船に入った。
ヒカルを脚の間に座らせ、背中を預けさせると、かかる重みが心地よかった。
そして、かつて同じ体勢でヒカルがアキラにしてくれたように髪を撫でた。
ヒカルの手がアキラの髪を撫でるとき、その手から負の感情が抜かれ
安らいでいく感じがするのが、アキラはとても好きだった。
自分の手も、同じように働いてくれれば、いいけど……
「塔矢…、オレ、なんでこんな疲れてんのかな…」
「―――うん、疲れたね…。」
アキラはそっとヒカルを抱き締め、続けた。
「今日はゆっくり、休もう。ゆっくり眠れば、明日には…」
「眠る…?」
「大丈夫、全部忘れて…ほんのちょっとの間だけ忘れれば、眠れるから」
ヒカルは暫くの沈黙の後、消え入りそうな声でなにか呟いた。
アキラはヒカルの顔を覗き込むと、頬を指で撫でた。
「ボクも、手伝うから…明日の朝まで、忘れていられるように」
ヒカルは首を捻って、不安げにアキラを見た。
「だからもう、何も考えなくて、いいから…」
アキラは微笑むと、優しくヒカルの唇を吸った。
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