誘惑 第三部 27
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「やめ…やっ…や…だぁ………」
ゆっくりとヒカルの中にアキラが押し入ってくる。
「んっ…」
自身を全て収めきるとアキラはヒカルの胸に両腕を回して抱きしめる。
それきりアキラは動かない。けれど自分の中にアキラがいるという感覚は、眩暈のような陶酔感
と充足感をヒカルに与えた。背に押し付けられた心臓の音と、内部で脈打つ熱い拍動がヒカルに
ゆっくりと火をつける。内と外からアキラの鼓動を感じていると、それだけで頭がくらくらしてくる。
それなのに、ヒカルを抱きしめたまま動こうとしないアキラに、ヒカルは焦れて名を呼んだ。
「……とう…や…ぁ…」
「ん……」
微かな返答が返ってきて、けれどアキラは身じろぎもせず、ただヒカルの身体に回した腕に力を
こめる。そのはずみでかヒカルの内部でアキラがぐん、と動いた。
「…っ!…」
アキラの腕の中でヒカルが跳ねる。
逃げそうになった腰を抱えこむようにしながら、アキラが更に奥へと自らを進める。
「…っ…とう…やっ…」
呼び声に応えるように、揺するように緩やかにアキラが動き出す。緩やかな動きがもどかしくて、
刺激を求めてヒカルは自分から身体を動かす。
「ん、………あ…ぁ……とぉやぁ…」
「しんどう…」
熱い吐息交じりの呼び声を首筋に感じ、更に柔らかな唇の感触がうなじに降りてきて、ヒカルは
背をふるわせる。
じんわりと追い詰めるようなアキラの動きにヒカルが焦れて身を捩り、首を振る。それに応えるよ
うに次第にアキラの動きが大きく、激しくなる。
「あ、あ…と…や…、とうや、もっと…」
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